青空を切り裂く。
寝て、起きて、学校へ行って、寝る。 なんの変哲もない毎日。 もう飽きた。だから、 「ねーねー、おにーさん。何やってるの?」 ある日の昼下がり。ビルの屋上にいた俺は、かけられた声で後ろを振り向く。 「おにーさん、って、俺?」 振り向いた先には小さな男の子。小学三年生くらいだろうか。 「おにーさんの名前は?」 「俺は志野陸斗(しのりくと)。中一。」 お前は? と聞くと、子供は「リク」と答えた。 「で。おにーさんはなんでこんなとこにいるの?」 「俺がここにいて悪いか。」 「いや、べつに。」 リクはそうとだけ告げると、目を閉じる。 「僕にはおにーさんの考えてることわかんないけど、おにーさんだったら、僕の考えてること、わかるんじゃない?」 「は? 意味深なこと言うなよ。わかるか。」 リクは「ははっ」っと笑うと、「だよね。」と言う。なんだそれ。 「僕ね。ここで死にに来たの。」 リクのカミングアウトを聞いても、別に驚きはしなかった。だって、 「おにーさんも自殺しに来たんでしょ? それで、僕を止める。」 「は? 勝手に人を自殺志願者にすんな。俺はただ授業を抜け出してきただけだ。」 「え? 死にに来たんじゃないの?」 「だーかーらー、俺は毎日同じことすんのに飽きたの。だからここにきて、いつもと違うことをしようと思ったの。」 「え? 未来の僕じゃないの? 死にそうな僕を止める、みたいな。」 「そんな感動話があるか! それに俺が止められるわけねぇだろ。それに、」 「それに?」 「お前はまだ生きてていいと思うぞ。どこの誰かは知らないけど、死ぬほどヤなことなんてそうそう存在しねぇんだから。」 空を見上げると、永遠と続く空が目に入る。 光は目に入ると痛くて、目を瞑ってしまう。 「あっ、飛行機!」 リクが指を指した先には、青空を一刀両断するように飛ぶ飛行機。白い機体は、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。 「おにーさん。」 「あ? なんだ?」 「僕、やっぱ帰る。死ぬのやめた。」 「ああ。そうしなよ。」 リクは、大きく手を振って、屋上を出ていく。 さて、俺も行くとするか。 俺のように錆びついた扉を開けると、大きく風が吹いた。