霧雨
窓の外では雨が降っている。 空には厚い雲がかかっていて、世界にふたがついているようだ。 暗い教室には俺一人。俺以外が世界から消えてしまったようで少し怖い。 「帰る、か。」 窓から目を背けるとカバンを手に取る。今年買ったばかりの通学カバンは真新しく、俺とは正反対だ。 教室を出ると、冷たい風が肌を突き刺してくる。そうか、もう10月だもんな。寒くて当たり前か。しかも雨だし。 今日、落選の通知が届いた。 俺が昔応募した新人小説賞だ。あれは今年の春、かな。一年かけて完成させた小説だから、なんか。何とも言えない感じ。 俺は昔から本が好きで、どんなときもずっと本と一緒だった。その分、友達付き合いは苦手だった。 だから、俺も、誰かの役に立てたらいいなと思って、小説を書いた。題名は「霧雨」。主人公が霧雨の日に出会った不思議な少女とともに、様々な旅をするのだ。主人公は生き生きとしていて、楽しそうで。でも闇を抱えていて。 靴を履き替え、外に出る。バサッと傘を広げ、肩にかける。 「えっ?」 「よっ!」 傘の影から現れたのは、茶髪の男子。小柄で瞳が大きい。 「俺、志野陸斗。(しのりくと)。よろしく! 俺の生みの親。」 「陸斗………。」 陸斗は俺が書いた話の主人公。スポーツマンで成績優秀。でも、ライバルの榊原心愛(さかきばらこあ)には負けてばっかり。そんなとき出会ったのが、ヒロインのナオだ(結局ナオは心愛の友達という設定だったのだけど。)陸斗はナオに恋する。と言った感じの恋愛物語。 「お前が書いた話さ、面白いんだけど、俺があまりにも悪いやつみたいじゃん?」 「まあ、そういうキャラだし。」 「だから、ちょっと書き直してよ。」 「書き直す!?」 そうして、俺と陸斗の小説制作が始まった。 そして俺は知ることになる。陸斗の秘密と、本当の恋を。