人生が変わった日
わたし、柚木月(ゆずきるな)、高校3年生。地味で、こんな子いるよなっていう、"普通の子"。目立たない、普通の子。 ―でも、わたしが"普通の子"を貫き通してきたのには訳があるんだ― 「るーなっ。あーそーぼー!」 「なにする~??」 中学2年の夏休み。親友、だった 三浦琴羽(みうらことは)と、遊んでいた。そわたしは、明るく活発だった。うちほど元気なクラスはないくらい、みんなも元気だった。 鮮明に覚えている。ちょうど、5時になった頃だった。神楽センパイがきたのだ。イケメンで、性格もよく、わたし以外にも神楽センパイを好きな人はいたと思う。 「なぁ、柚木。ちょっといいか?」 周りの視線が一斉にこちらに向いたのがわかった。反射的に、下を向いてしまった。もう一度顔をあげ、言う。 「は、はいっ。なんでしょうか...」 「こっち来て」 言われた通りに、歩く。 「あの、、」 「俺、柚木のことが好きだ。付き合ってください。」 わたしにとってはじめての告白は、神楽センパイからだった。その時、琴羽の声が聞こえた。そう言えば、琴羽も神楽センパイのこと、すきだったっけ。 帰るとき、聞こえた。 「抜け駆けだよ。るなのこと、信用してたのに」 ひっ、と、すすり泣く琴羽の声が聞こえる。怒りと悲しみが混ざったような声だった。 琴羽は、話しかけても答えてくれるし、楽しそうだった。わたしには、そう見えた。でも、あの言葉を聞いてしまったから、誰も相手にしてくれないってことはわかってる。その日、わたしはわたしを捨てた。もちろん神楽センパイもフッた。そのおかげで、神楽センパイからも、ひどく言われてるんじゃないかって、心配だったけど。 別に、いじめられてたわけじゃない。自分で決めた道だ。 でも今、そんな人生が変わろうとしている。 幼なじみの悠が、言ってくれた。 「本当の月がみたい。僕の前では、作らなくていいから。本当の月の方が、僕は好きだよ。」 「悠...」 月、だなんて呼んでもらえたのは、ずいぶん久しぶり。 「僕と付き合って。僕の前では、泣いてもいいから」 気づけなかった。こんなにも近くにあった幸せ。もう、離さない。 「うんっ...!」 目の前にある幸せ、もう離さない。