短編小説みんなの答え:0

Sincerely(心から)

僕は、その声が、僕のみちしるべだった。 別に目が見えない、という訳でもない。 ただ・・・思い出してしまうのだ。 僕はその刻、無知だった。 ・・・・・・時に、無知であることは幸福である、そんな意見を耳にする。 ただ、そんな奴が近くに居ても邪魔なだけだ。 何も勉強してない奴が突如としてテストなんか受けさせられたらどうだ?? 苦痛で仕方がないだろう? 僕は、周りの目線が怖くなり、がむしゃらに勉強した。 周りに追いつきたかった。その思いを一心にして努力した。 ただ・・・知識というのは全く僕の身についてこなかった。 努力で報われることは・・・無かった。 その時、俺の中で何かが切れてしまった。 もう、ダメなんだ。と、そんな悲観的な思考が僕の脳内を埋めつくした。 辛い。その言葉をひたすら吐き続けた。 そうしたら・・・・・・救われると思ったからだ。 そうしてある日、救いの手が差し伸べられる。 それはなんてことない日の国語の授業の時。 交流する時間なのだろう、周りがザワついていた。 「・・・あのさぁ」 その瞬間、僕の机がバン!と音を鳴らした。 誰かが机を叩いたのだろう。 僕はいつものように俯いていたので驚いてしまった。 「な、なんだよ」 言葉にいい詰まりながらもそう苦言を呈す。 「そんなに辛いんなら学校なんかこないでくれる??」 ・・・・・・また、言ってしまっていたのか。 辛い。その言葉を。 そりゃ周りからしたら僕のことなんでどうだっていいもんな。そりゃそんな言葉が出るだろう。 「・・・・・・そうか、そうだよな。悪いな、んじゃ帰るわ」 ・・・・・・体調不良やらなんやらと言えば帰してくれるだろう。そう見込んでそう発言した。 「・・・・・・ちがっ・・・いや、そうじゃなくて!」 リュックを取りに行った際、そう言われ止められた。 その大きな声で辺りが静寂に包まれる。 「わ・・・私が勉強教えてあげるから、だからそんなすぐ帰らなくてもいいでしょ!?」 こいつ、女か・・・。 喋り方で理解した。 「・・・・・・そうか。じゃあ教えてくれよ」 それが出会いだった。 その時は、こいつがどんな存在だったのか、知らなかった。 どうやらこいつは学校トップの頭脳で、成績も確定でオール5。つまり、僕とは程遠い存在だったことが伺える。 けれど、こいつは僕に言葉を教えてくれた。 こいつに教わってから、言葉にはいろんな意味があることを理解した。 例えば・・・さよなら。 この言葉は、別れを告げる、そんな時に使うらしい。 ・・・・・・こんな単純な言葉さえも、理解せずに使ってただなんてな。そこで自分の無知さを再確認してしまった。 ある日、そいつと辞書を確認していると、最初の方に変わった言葉があった。 「・・・・・・なんだ、これ。『アイシテル』・・・?」 「・・・・・・それは、自分の感情を伝える時に使う言葉よ」 こいつは最初こそ僕の無知さに呆れていたが、それも慣れたのか、冷静にそう発言していた。 「どんな場面で使うんだ??」 「え・・・・・・そ、それは・・・・・・告白する時、とか・・・・・・」 「・・・・・・告白?」 「んあー!こういうのは男同士で会話するやつ!!分かる!?女子の私に聞かないで!!」 ・・・・・・? まぁ、なんとなくは理解出来たからいいか。 と、そんなこんなで、僕の知識はみるみる膨らんでいき、やがて、師匠越えが出来るほどの頭になっていた。 「"受験"・・・・・・ねぇ・・・」 僕は中学生なのだが、気づけば中学三年になっていた。 この時期になると、次第にアイツと会話することが減っていった。 それと同時に、寂しく、悲しく思えた。 独り・・・・・・か。 けど、受験っていうのは今まで学んできたことの総集編みたいなもんだ。 僕には実質的にアイツの知恵がある。なら。 「僕ならできる」 そうして、勉強した。 相変わらず、がむしゃらに。 けど、そこには確かに違うものがあった。 それは・・・知性だった。 僕は、かなりレベルの高い高校の試験に、合格した。 正直ここまで成り上がれるとは思ってなかった。 「・・・感謝、しなきゃだな」 アイツに、礼を言わなくてはいけない。 そう思った俺は、残り数少ない投稿日に、そいつの席へ向かった。 しかし、そこには誰も座っていなかった。 それから、卒業式でさえ、アイツと出逢うことは出来ず。 いつの間にか・・・歳は17になっていた。 なぜ、僕と関わっていたのか・・・今となってはいろいろと謎なのだが。 それを知ることさえ、許されなかった。 ところで僕は、アイシテル、の意味を最近理解した。 曰く、特別な意味を持つ、ということを知った。 「・・・・・・今会えたら、言いたいなぁ」 その、言葉を。

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