君に出会ったあの丘で
はぁ、なんで私が… そんなことを思って私はいつもの丘に行く。 見晴らしが良く、人気が少ないこの丘で、いつもの音楽を聴く。 お気に入りのバックにパンパンに入った荷物たち。 私のお気に入りの場所で暇を潰すためのもの。 いつも通りの時間を過ごす…はずだった。 私は、広瀬なな。 家で親に嫌われている。 まぁ、本当の親じゃないんだけど。 家事を私に押し付け、暴力を振るう。 居場所がなかった。居場所であるべき場所が居場所じゃなかった。 だから私はいつもの場所に駆け込む。何かから逃げるように。 はぁ、なんで私が… いつもの丘でぼーっとしていた。 ヒューと冷たい風が私の隣を通る。 するとその瞬間ゴォーという音を立てた強い雨が降ってきた。 ゴロゴロと雷の音も聞こえる。 どうすることもできずにただただうずくまる。 怖い。昔実の母に捨てられた。 今のような雨の中で。 私は今日も独りきり。 ゴォー だんだん雨が強くなる。 もう無理。と思った次の瞬間、私は背後から抱きしめられた。 暖かさが伝わる。 「風邪、引いちゃう。近くに家があるから一緒に行こう。」 私は言われるがままその人の家にたどり着いた。 その人は自分と同い年の坂上ゆうからしい。 「…ありがとう」 私は静かに呟いた。 「大丈夫。それよりさ、遊ばない?」 そう言ってゆうかは私の手を引っ張り二階へ上がった。 ゆうかの部屋らしい。何もかもが整っている。 それから私たちはすぐに打ち解け、毎日遊ぶようになった。 ある日、ゆうかが突然暗い顔をして言った。 「転校するんだ。お父さんの転勤で。」 幸せの時間は一瞬だった。 もう、私の心を癒してくれる人はいないんだ。 「来週の月曜日、笑顔で見送ってよね。あの丘で」 ゆうかは言った。 そうだねと私は頷く。 そして月曜日。 私は笑顔で見送った。 「また会いに行くよ。」 「うん、親御さんと仲良くね。」 そんな会話をした後ゆうかは泣きながら、でも笑顔で言ったんだ。 「また、会おうね。私たちが出会ったこの丘で。」 夕日が輝く。まるで私たちの友情を照らすように。