セイギノミカタ。
僕は英雄(ヒーロー)だ。 「やめなよ。なんでいじめるの?」 一度、そう言っていじめられっ子を助けたことがあった。 いじめっ子はヘラヘラと笑っていたけれど、次の日から教室に居場所がなくなったことは本当だ。 身を捨てて助けたいじめられっ子は、鋭い目で僕をにらんでいた。 「何をしたんだ。何をしてくれたんだ」 その瞳は、そう告げているようで、どうしても、どうしても・・・・・・。 一人が寂しいわけではない。一人だったら誰も傷つけない。誰からも恨まれない。だって一人だから。 窓から見える景色は秋の色に色付いている。ほんのりと金木犀の香りがして、頬を緩ませる。 教室の中に目を向けると、広いはずの教室はひどく狭く感じた。 あーあ。いつ間違えちゃったんだろう。 助けたはずなのに。教えられたことをしただけなのに。 廊下側のひと席はいまだ空席だ。僕が助けた、彼女の席。 僕をにらんだあの日以降、彼女は学校に来ていない。 なんで僕はにらまれたのかな。無理してまであんな空間にいたかったのかな。 よく頑張ってるよ、君は。だからもう、無理をしないでよ。 翌年、僕と彼女は違うクラスになった。そして、彼女は彼女をいじめていたはずの子たちと同じクラスだった。 その年、つまり僕と違うクラスになった年から彼女は学校に来るようになった。 つまり、彼女はいじめられていたから学校に来なくなったんじゃない。僕が助けた、違うな。助けたと勘違いしていたことがきっかけで学校に来なくなったのだ。 僕は偽物の正義で、助けたつもりになって、実際は助けてなんか、これっぽっちも・・・・・・。 視界がにじんだ。泣くべきは僕じゃない。僕は傷ついてなんかない。傷ついたのは彼女だ。 こんな僕、大っ嫌いだ。偽物の正義なんて、使わなきゃよかった。 僕はもう、セイギノミカタなんかじゃない。