情報屋のお話。
ここはとある街の情報屋さん。 ここの情報屋は、数えきれないほどの情報を握っている人物。 その顔はボウシを深くかぶって顔を隠している。見えるとしたら、口元のみ。そして、名前も明らかにしていない。 店主のことは、街の誰もが知っていた。 誰もに恐れられ、気味悪がられている情報屋。 性別も、どこに住んでいるかも、顔も、名前も、なにも分からない。 そんなナゾに包まれた、不思議な不思議な情報屋のお話。 ●●● 情報屋は、一応お店である。 街の商店街の一番端っこにある、誰も目が行き届かないような場所。 一日に一人だけ、お客さんは情報を求め情報屋にやってくる。 一日に一人だけ。一日に二人訪れることはない。どうしているのかは、情報屋にしか分からないヒミツだ。 情報屋は本を読みながら、お客さんが来るのを気長に待った。 ・・・・・・・ 情報屋には、一日に一人だけ必ずお客さんは来るのだから。 そんなこんなで、今日は午前中にお客さんがやってきた。 まるで吸い寄せられるようにやってきたのは、若い女性だった。 情報屋は街のどんなことも知っている。だから、この女性の名前も知っている。 「いらっしゃい、今日のお客さん。一体どんな情報が知りたいのかな?」 パタンと本を閉じ、ボウシを深くかぶり直す。 わずかに見える口元が、にんまりと月の形に歪められた。 今日のお客さんの名前は、小林ハナ。十八歳。成人になったばかりだ。 今日のお客さん―ハナは、口を開いた。 「わたし、好きな人がいてっ。山内一輝って言うんです。どうしてもその人のことが知りたくて」 「へえ。その人の情報が知りたいってわけか」 「…はい。情報屋さんなら、どんな人の情報も知ってるんですよね…?」 …フチが太いメガネをかけ、見るからに地味で、勇気のなさそうなやつだ。 山内一輝。十八歳。誰にでも優しく、その上顔がよくて誰からも好かれている人物。 そんなスーパーマンとこいつが釣り合うとは思えない。 それが、情報屋が真っ先に思ったことだった。 「…いいだろう、そいつの情報を教える。だが、こっちは情報を渡してやってるんだ、もちろん守ってくれることはちゃんと守ってくれなきゃいけない」 「……わ、分かってます」 ハナがうなずいたのを見ると、情報屋の瞳はキラリと光った。しかしボウシにより隠されているため、誰にも気づかれない。 情報屋だって、一応商売だ。 情報を差し出す代わり、相手にはある程度のことを守ってくれなければならない。 ・情報は誰にも教えない。たとえ、なにをどう言われても ・本人に言わない ・悪用しない 「他にもたくさんあるが、お前だったらなんにも言わないだろう。そして、自分のことは誰にも言うな」 もちろん自分とは情報屋自身のことである。 自分の身元がバレたら、もう情報屋なんてやっていけないからだ。 「守れるな」 「は、はい。絶対、守ります」 ハナがこくこくとうなずくのを見た情報屋は、立ち上がり、迷いもなくタナから一冊の本を取り出した。 通常のコミックと同じくらいの分厚さをしたその本を、音を立てずにカウンターに置いた。 「これが、山内一輝の情報だ。絶対、誰にも見せないように」 最後の最後までそう言われたハナは、ただただうなずくだけだった。 帰り際、お礼をしたいから住所を教えて、と言ってきたが、情報屋は断った。 残念そうな顔をしながらも、ハナは本を抱きかかえ、情報屋の前から姿を消した。 ●●● 誰もいなくなったのを見届けて、情報屋は店を閉めた。 誰もいなくなったカウンターを見て、くすくすと笑う。 「…身元が分かったら、情報を集められないからね」 独り言のようにそうつぶやいた情報屋は、ため息をついた。 「さて、と…。情報を集めにいくか」 しばらく店の奥に引っ込んでいた情報屋は、何分かして戻って来た。 くるくるとした金髪。目は深いエメラルドグリーン。 ふんわりとしたワンピースに、少しヒールのあるパンプス。 おまけに、きれいな手提げバッグもある。 情報屋は裏口から店を出て、商店街の通りに向かった。 駅前でそわそわとしていた男性を見つけると、すぐに腕を絡めた。 「ごめんっ、遅くなっちゃった!」 「ううん、気にしないでいいよ。それじゃあ行こうか」 声は高く、ふんわりとしていた。 そのキレイなエメラルドグリーンの瞳の奥は、怪しげに光っていた。
みんなの答え
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すごい…!
こんにちは、のあだよ! す、すごい…。情報屋のお話しってなんだか新感覚でおもしろい!情報屋の店長は、あんな感じで情報を集めてるんだね… とても面白かった!また書いて欲しいな!