静寂の崖
北海道の、端っこの端っこにある、小さな村。 右も左も畑、畑。 そんなところに、タマオは住んでいた。 タマオは、よく、あの場所にいく。 家の手伝いをさっさと終わらせて、あの場所にいく。 そう、あの場所を、タマオは「静寂の崖」と呼んでいた。 蝉の声や鳥のさえずり。川の音。風の音。 あたりの草が立てる、サラサラと心地の良い音。 どこか落ち着かせてくれる、あの音。 どこまでも自然でできていて、まるでこの世界にはタマオしかいないんじゃないかと思わせられる、あの音。 ノイズが聞こえない、あの音。あの場所。 誰も知らない、あの場所。 今日も、タマオは「静寂の崖」にいく。 静寂の崖で、本を読む。 静寂の崖で、歌を歌う。 静寂の崖で、「あの子」のことを思い出す。 あの子……氷雨のことを。 何もしないでぼうっと考えていると、ついにタマオは頭がおかしくなったのかもしれない。 だって、氷雨の声が聞こえるんだもの。 氷雨がそこに、いるんだもの。 「こんにちは。タマ」 タマ……氷雨はタマオをタマと呼ぶ。 それが懐かしくて、苦しくて、泣きそうになる。 「氷雨……どうしたの?」 「なによ。どうしたのって。この場所あたしに教えてくれたの、タマじゃない」 ああ、たしかに教えたよ。君にしか教えていないよ。 不意に、目頭が熱くなった。 「あはは。なによ、タマ。ないちゃって。……こっちだってないちゃうじゃない……!」 氷雨は泣いていた。 そして、こういった。 「あたしに縛られないで。過去に縛られないで。いい? あたしは死んだのよ。トラックにはねられてね。それは事実なの……悲しいけどさ。だからさぁ、あたしの分もタマは生きてよ。絶対! 約束だから!」 氷雨は、段々と薄くなっていった。 「さよなら、タマ。大好き」 タマオは、黙っていた。 その時は、氷雨に返事を、できなかった。 まあ、返事ができたのは何年も、何十年も後のことなのだけれど。
みんなの答え
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最高!
キョンキョンです!本当に感動しました! 物の表現の仕方が、とても良くて静寂の崖に行ったような感じがしました。 特に、最後のぎょうで話が繋がって、すごく泣けるお話でした! これを書いた人、凄い! 最高です!
感動!
おはにちばんわ!虹色花火だよ! 本題 とても感動しました!いい話でした!ありがとうございました!