短編小説みんなの答え:0

僕はキミでキミは僕

「うーん…どうしようかなァ」 僕は川崎あすみ。高校1年生。「僕」って言ってるけど、一応女子なんだ。 今僕は、明日の友達とのお出かけに何を着ていくか悩んでいる。 自室の鏡の前で、タンスの中の服をとっかえひっかえ当ててみる。 (…カッコよく見えるのがいいな、男の子みたいに) スカートのない穿き物の段から、ジーンズやらスラックスやらを取り出す。 そして、ふと鏡に目を向けたその瞬間、僕は自分の目を疑った。 そこには僕ではなく、ゴシックロリータ調の服装の少女が映っていた。 …いや、違う。よく見たら僕じゃないか! 「ねェ、どうして…?」 "その少女"は、すがるような目で僕に訊いてきた。 「えッ…な、何が…?」 戸惑う僕に、少女は答える。 「どうして私を閉じ込めるの…?」 「えッ!?ぼ、僕はキミを閉じ込めてなんか…」 意味がわからない。閉じ込める?そんなことをした心あたりはない。 鏡の世界でもあるのか?これは…夢? 僕はおそるおそる尋ねる。 「キミは…誰…?」 少女は答える。全てを見透かしたような眼差しで。 「私はね…キミだよ」 「はぁ!?」 ますます意味がわからない。 「私はキミで、キミは私。ほら、思い出してよ…ね?」 「ち…違うッ!キミは僕なんかじゃない!僕は、僕はッ…」 「『カッコよくなりたい。キミみたいに可愛い格好はしたくない』…でしょ?」 「ッ…!」 その先の言葉を当てられて、驚いた。 「…言ったでしょ?私はキミ、キミは私。まだ認めない?」 「僕は…僕は…」 言葉が出ない。鏡の前にくずおれるしか出来なかった。 「…私は、キミの"もう一つの理想"。抑圧された、キミ自身。」 「…抑圧された…僕…?」 …そこで目が覚めた。やっぱり夢だったんだ。 でも、薄々わかっていた事実がさらにはっきりして、僕の胸を締め付けた。 僕には、隠してきた"もう一つの理想"があるということ。 今日はお出かけなんかない、普通の休日だ。 服屋にでも、行ってみようかな。

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