吐き出せたらなら
「でね、その後が酷くって!」 「そうなんだ…大丈夫?」 友達の悩みをよく聞いてあげている。 友達が悩んでいるなら極力助けたいし、 話を聞くだけでも気を紛らわせられる。 友人は笑みを浮かべながら帰って、 私は愛想笑いを張り付かせながら見送る。 彼女の力になれてよかった そんな想いと 私の悩みは聞いてくれないよな という想いが浮かび上がる。 それがいつものルーティーン。 朝日に起こされて体を起こす。 まだ眠たい目を擦り顔を洗う。 朝食を摂って、たまの休日だからと 紅茶を淹れて。菓子を準備して、 映画を見て。 映画はとても面白かった。 面白かったのとは裏腹に、 紅茶も、菓子も、美味しいはずなのに。 不味く、筆舌し難いほど不味く感じて、 それを無理矢理噛み砕いて飲み込む。 それはいつものことなんだけれど。 就寝前。 自分のことを振り返っていた。 友達や親に信頼されて、 いろんな話を聞かされてきた。 聞きたくもない様なことも、自慢話も。 そういえば、私は何か話したことは あっただろうか。 不意に頭を掠めた思考は、 通り過ぎることなく頭の中を駆け巡った。 聞かされる度に吐きそうになった気持ち。 スッと心が軽くなった気がして、 トイレに駆け込んだ。 未だに気持ちは吐いていない。 もし吐けるとするなら、 あの日の紅茶も、菓子も吐いたのだろうか。 どちらにせよ、私には無理な事だった。 飲み込んでしまうから。