義翼
義翼で空は飛べないの____? そんな事を思ったあの日。 勿論、私は鳥では無いから飛びはしない。 でも、8歳の私が感じたあの時の、青くて緑で赤で黄色の違和感はあれから何年経とうが忘れる事は無かった。 忘れなかった理由は何かわからないけど、ふとした瞬間に思い出すそれは何かの暗示にしか感じなかった。 そして、それは思いもよらないところでその全貌を表した。 13歳になった私は平らな毎日をただ眺めていた。 私の瞳にどうしようもなくはっきりと映るのは、いつもの教室と壊された机、黒板に書かれた歪な形の漢字の羅列。 その一文字一文字は、ありとあらゆる罵詈雑言が私へ向けて書かれていた。 『いじめ』 教室を表すのに適した言葉はまさにこれだった。 零れ落ちそうになる雫をなんとか堪え、私は壊れた机を元の位置に戻すと、何も考えれなくなり、ただ時間が過ぎるのを待っていた。 俯くと涙が頬を伝ってしまうので、窓の外を眺めたが、外はこれ以上ないくらい蒼穹で、なんだか物悲しくなり私は目を伏せた。 『ここでも私はいじめられる……』 私が皆と違うから。私の髪が真っ白で目が青いから。 私が“普通”じゃないから。 私が、普通じゃ、ない、から…… ふと思い出した。 『義翼で空は飛べないの____?』 嗚呼、これはまさしく私だ。 そう感じた、夏の日だった。 今日もまた暗くて湿った1日が終わりかけた事を知ったのは、夕日が傾きかけている空に起こされたからだ。 「あれ、私……寝てた……?」 「帰ろ……」 全てどうでもいいや、そんな事を思いながら私は教室を出ようとした。 「待って。」 透き通るような綺麗な声が響き、私は後ろを振り返った。 『 × × × × 』 その子は真っ白いワンピースに身を包み、優しそうに微笑んでいた。 やっぱり義翼でも空は飛べる____。 私が微笑み返すと、何故だか瞳から零れ落ちる涙。 それは、夕陽よりも綺麗で透き通っていた。 『 綺 麗 だ ね 』 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 前回コメントして下さった方、ありがとうございます! 渚沙