りんご味の夏
その日は、随分と暑かった。 額を無防備に出して、口にりんご味のアイスを突っ込んで、首に掛けている汗拭きタオルを水浸しにしているというのに、何なんだこの暑さは・・・ やはり、外になんか出るんじゃなかった。いくら夏休みの宿題が終わって暇だからって、図書館に行こうなんて考えるんじゃなかった。・・・俺の父と母は、俺が幼い頃に起きた火事で死んでしまった。だから今は成人している兄との二人暮らしだ。 信号が赤色に点滅したので足を止める。向こう側を見てみると、とても暑そうにしている兄の姿があった。俺が兄に「おーい」と呼ぶと兄は俺に気づいた用で俺に手を振った。信号が青になったので一歩踏み出すと、キキーッと耳障りな音がした。その途端兄の居る歩道に大型のトラックが突っ込んだのだ。・・・え? 兄だったナニカを見てみると、それは首や手足が変な方向に向いていて、赤い液体を垂れ流している。そのまま、俺の意識は遠退いていった。目が覚めるとそこは虚無空間。そして向かい側には悲しそうな顔をした兄の姿があった。 「・・・○○、帰れ。居るべき場所へ。」 俺が兄に近づこうとすると、兄は厳しい目付きでそう言った。俺がビックリして立ち止まって居ると、兄は俺の肩に手を触れて俺を後ろに振り向かせた。 「お前は此処に居ちゃ駄目だ。」 そう言うと兄は俺の背中をトンッと押した。・・・騒がしい。色々な声が聴こえてくる。『先生、○○君が目を覚ましました!』そんな声が聴こえてきて俺はハッと目が覚めた。そこは病室で、俺は真っ白なベッドで寝ていた。 「○○、良かった。目が覚めたんだね。」 白衣を着たお兄さんが話しかけてくる。「・・・兄さん、兄さんは?」 俺が聞くとお兄さんは 「・・・君の、お兄さんは、もう・・・」 気づけば、涙が頬を伝っていた。そっか、兄さんはもう、居ないんだ。何かが、崩れる音が俺の中だけに響いていた。 口の中にりんご味がまだ、残っていた。 END 感想お待ちしております!