唄を奏でる、海を仰ぐ。
海にさよならを、唄に願いを____。 私、檀野凪(ダンノ ナギ)は、思い出の場所、この浜辺に足をおろした。 真っ赤に燃える太陽が私の体を照らす。 こんなにも雄大な景色なのに、ここには私以外誰もいない。 海風がゆっくりと私の髪を撫でる。 私は遠い遠い地平線のそのまた向こうにある何かをじっと見つめていた。 そんな私の姿は、もう明日からここにはいない。 生まれも育ちもこの海と共に過ごしてきた私は、とうとう15年でここに別れを告げなければいけなくなった。 私は、海にいたい。 そんな私の願いをわかったかのようにまた風が私の頬を今度は少し冷たく撫でた。 波は私の足元を風に乗って包む。 いつまでもここにいたい、そんな事をふと頭の隅で考えた。 ただ、いつまでもここには居られない事は、だんだんと沈んでいく真っ赤な太陽が表していた。 本当にさよならなんだね。 心の中で呟いたその言葉を胸にしまい、私は徐(オモムロ)に息を吸った。 私の小さくて儚くて丸くて、でも絶対に叶わない願いを、この海に届ける最後の唄に乗せて________。 砂浜は私の声に聞き入ってくれた。 波の音は、時折優しく伴奏をしてくれた。 もう消えてしまう太陽は私の声だ。 もう太陽は消えて、月が昇ってくる。 今度は、さっきよりも温かい息を吸った。 『さよなら、私の大好きな海。』 ふと零れ落ちる水晶(ナミダ)は私の海の色だ。 私の海の色。 なんだか少し文学的で、我ながら良い言葉だ、と思った。 いつまでも絶えず奏でる波の音に終止符を打ち、私は海風にさよならを告げ、裸足のまま砂浜を走った。 もう2度と会えないこの海が、いつか誰かのもとへ届けばいいな。 そんな事を少し思った、夏の淡い情景だった。 ーーーーーーーーーーーーーー 『わぁ、この海すっごい綺麗…………』 まだ小学生程の小さな少女は、あの海の夕焼けを仰いだ。 青いワンピースのひらひらとしたスカートが風に靡(ナビ)いた。 それは、いつかの少女がここへ始めて来たときの姿と重なった。 いつまでも無くならないものは、きっとある。 あの少女の願いは、少し違う形で叶ったようだ。 『この情景を、また目に焼き付ける日が来ますように。』 ーーーーーーーーーーーーーー 渚沙です、また小説書いてみました~ 皆さんのコメント励みになってます! これからもまた小説書くと思うので、また良ければ見て下さいね笑