ちょこれーと
チッチッチッと時計の針が鳴る。 頑張って、とはもう言えない。 全身がむくんで、チアノーゼで首筋が紫色に染まった妹を見ていると苦しいんだろうなと思う。こんなに苦しくても生きている方がいいんだろうか。 「いい」も「悪い」もなくて、機械がただ生かしているだけなんだろう。 死にたくないと結菜が言うなら、心の底から絶対応援する。がんばれって声が嗄れるまで言い続ける。 でも結菜がほんとは「もう楽になりたい」って言うなら、そっか。としか言えない。眠ったままの方がいい。 「ママ、あのね」久しぶりにママと呼んでみた。それに気づいていないのだろうか。母は何?と素っ気なく聞いた。 「チョコ、買ってきたの。結菜が好きだから。」 金色のリボンをほどき、濃いのと薄いのと組み合わせたチョコレート色の包装紙を開いて、蓋を取った。トリュフチョコが綺麗に並んでいる。 「可愛いチョコね。」とママは涙ぐんだ。お父さんは、何も言わないで結菜とにらみ合いっこをしている。 チョコをつまんで、口に入れた。砂糖の混じっていないチョコパウダーの苦味に口がすぼんだところに、甘みがじんわりと広がっていく。何となく、結菜が笑ったような、そんな気がした。 明け方、結菜はひっそり眠るように逝った。私はお父さんからもらった線香をたて、柄杓で汲んだ水を水入れに満たして、改めてお墓を見つめる。手を合わせ、目をつぶって、ゆっくりと頭を垂れる。