シのフラットー銀色のピアノー (めっちゃ長文)
「発表会の曲……発表会の曲……うーん…無理!!」 発表会の曲が未だに決まらない。もうそろそろ発表会の曲の練習をしないといけない時期なのに…! ……というよりピアノ辞めたい!なんか嫌になってきた! ピアノなんてろくなことないもん!発表会終わったらすぐ辞めてやる!! 次の日、女子が音楽室の電子ピアノの前に集まって何やら話していた。 「…?どうしたの?」 「陽菜(ひな)、電子ピアノの“シのフラット”が壊れてるの!」 ウソではなかった。たしかに弾いてみると音程が全然違った。“シのフラット”の音は好きだったのに……。 「ねえ陽菜、ピアノ、どれくらい弾けるんだっけ?」 「え……」 ドキッとした。ピアノなんてもう辞めたいのに… 「えー。ベートーベンの曲のとか弾けるんじゃない?」 「いや、難易度関係ないじゃん!」 友達がツッコミを入れる。そのまま笑わせて話題を変えたい。 だが、そう簡単に上手くいかなかった。 「で、どうなの??」 「えっと……銀色のピアノ!とか!」 テキトウな曲を口走った。こんな曲ない。 …………シーン…… 「…………あ!銀色のピアノといえば!グランドピアノにある角度から光を当てると、銀色のピアノに見えるんだって!」 友達が沈黙を割った。 「へ、へ~!すごい、ね!」 とっても恥ずかしかった。私の運命はどうなるのか、と、思ってしまった。 「発表会の曲は何弾くの??」 「!?」 一番嫌な質問。 「決まってません!」 きっぱり答えた。 家に帰るとすぐにピアノの練習に取り組んだ。 「…………ん?」 ピアノの下に何か挟まってる。 手紙? 「たしかこれ……死んだお母さんの…」 “陽菜へ 陽菜は小さいころからずっとピアニストになりたいって言ってたね。 上手に弾けたらはしゃいで、上手く弾けないと泣き叫んで、大変だったね。 でも、夢を諦めちゃいけない。 運命は自分で決めるもの。 ピアニストになった陽菜を早くみたいな。 母さんより” 大粒の涙がこぼれた。 やっぱり諦めたくない! そのとき、私の頭に一つの曲が響いた。 発表会当日。あと少しで私の出番。 よし! 舞台袖から出た。ピアノは光が当たって銀色に輝いている。 ピアノに指を置いて音を響かせた。 曲はベートーベンの“シのフラット”のついた「運命」だ。