時を巻き戻す
綾子は超難関校に通っている。生徒の中でも選りすぐりの生徒が入る特進クラス。通称勝ち組クラス。綾子はその特進クラスの生徒である。高校二年生の綾子は道に落ちていた玉を拾った。 太陽の反射を受けてキラキラと光っている玉を綾子は魅入られたように見つめた。 「綺麗……」 ぼんやりと呟く。 綾子はスクールバッグを肩にかけ、家に向かって走り出した。 「お母さん!」 叫びながら二階に行くと、ここのところ具合が悪い綾子の母、文子(ふみこ)は辛そうな顔で精一杯の笑顔を綾子に向けた。 「綾子……」 いいよ、そんなに笑わなくても。泣きそうになったが、綾子は軽く舌を噛んで涙が溢れないようにした。綾子は笑顔を作った。 「お母さん、私、これ見つけたの。綺麗でしょ?」 文子はそれを見つめ、 「綺麗だね」 と答えた。お母さんの病気良くなったよ。そう綾子が思うと、文子の悪かった顔色が徐々に良くなり、文子が言った。 「具合、良くなったみたい」 「え?」 なんで?玉を見たら急に具合が良くなったって? 文子の体はかかりつけの病院で精密検査をしても異常は見当たらなかった。 帰宅した綾子は玉を見つめた。 なんでだろう?この玉はなんなんだろう? 登校した綾子は友人の望(のぞみ)に玉を見せた。 望は玉を見つめ、 「万能玉かもね」 「万能玉?」 「なんでも叶えちゃうし、病気だって治せる玉。この玉があればあの、山田くんも御村くんも綾子のことが好きになる」 山田くん、御村くんとは特進クラスの成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群の二人。二人とも女子からモテモテ。 「望、私、この玉をそういうことに使う気は無いよ」 帰宅した綾子は玉に祈った。あ母さんからもらったハンカチが見つかりますように。すると、そのハンカチが綾子の隣に落ちていた。さっきまでそこになかったのに。望が言ったことは本当なの?だとすれば、私はこの玉をもったいちゃいけない。私はきっとこの玉をいけないことに使ってしまう。この玉は人徳な人が使うべきだ。綾子は窓から玉を思い切り投げた。 翌日、教室についた綾子に望が玉を見せた。 「玉を拾ったよ」 望が見せた玉には微かにひびが入っていた。 その玉、私が投げた、万能玉。 「これ、万能玉みたいなんだよね。塾のテストで満点、取れますようにって願ったら本当に満点、取れちゃって」 望は綾子の思いに気づかずに話を続ける。 「世界が滅びますようにって祈ったら本当に滅ぶのかな?」 望はたまに祈り出した。冗談でやっているのだろう。 駄目。冗談でも駄目。万能玉はその願いも叶えちゃうから。すると、床が揺れた。天井にひびが入り、落ちてきた。望が床に倒れた。山田も御村もクラスメイトたちは机に身を潜ませる。望から綾子は玉を奪い、玉に叫んだ。 「さっきの世界が滅びろという願いはなかったことにして!万能玉は世界から消えて!」 すると、さっきまでの揺れは無かったかのように教室が元に戻った。望は蒼白な顔で立ち上がった。 綾子はあの時以来、万能玉を見ていない。
みんなの答え
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おー
登場人物が、「山田太郎ものがたり」みたいですね。 万能玉は、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」に出てきた玉みたいですね。 (嫌味じゃないです) すごく良かったです!