明日を迎えるには
明日を迎えるには、一人のいけにえが必要だ。そんな日が1年に一度くる。その年のいけにえは、麗(れい)だった。麗は貧乏な家庭に産まれたが、村で評判の美少女だった。だが、麗の姉や両親達は麗を認めなかった。毎日家事を全て押し付け、奴隷の様に扱う。そして1ヶ月前、いけにえを誰にするか、村の話し合いで両親達は16歳の麗をいけにえに捧げる事にしたのだ。「ついに明後日…か」麗はあまり悲しくなかった。家で酷い仕打ちを受けていた麗にとってはいけにえに捧げられる方が遥かにマシだった。だがそんな風に思っていた麗をある少年が変えた。「君、明日のいけにえの子だよね」もう明日自分はいけにえに捧げられる麗は自分の部屋を整理していると、少年が窓から顔を出した。「あなた…誰?」「俺は蘭(らん)だよ。さぁ逃げよう「逃げる?どうして?何処へ?」「俺が君をいけにえになんてさせないから。さぁ。」そういって蘭は窓から麗の部屋に入り、部屋にある荷物を必要なものだけ鞄につめ、家族にバレないよう、窓から出た。「ねぇ、逃げるって…どこに行くの?」「この村から出よう。今日中に。」「えっ、今日中に?」「止まっている暇は無いんだよ。大人達が探しに来たら面倒だ。」そうして麗と蘭は村を出た。「案外ばれないもんだなー」「蘭、何処に行くの?」「この小屋で休もう」蘭は薄汚い人のすんでない小屋を指差した。「はい。」中に入ると蘭は麗にパンを渡した。「ありがとう…」麗はまともな食事を貰えなかった為、蘭のくれたパンはとても嬉しかった。「麗はやせすぎだよ。食べ物は沢山持ってきたんだ。好きなだけ食べて」「…蘭、なんで私を逃がしてくれるの?」麗はずっと疑問に思っていた。何故見ず知らずの自分を助けてくれたのだろう。自分がいけにえに捧げられなければ明日は来ないというのに。「あー…えっとそれは……から…」「え?」「麗が俺を助けてくれたから…」「私?」全く見に覚えが無かった。麗が頭の中でぐるぐる考えていると蘭が話を始めた。「8年前、俺が6歳の時、俺はいけにえに捧げられる事になった。その時麗は俺を逃がしてくれた。代わりに、盗みを働いていた大人がいけにえになった。」「うーん思い出せないけど、蘭、ありがとう。」「いや、別に俺はただ麗のことが…なだけで…」「ん?」「いや、何でもない。」そして麗と蘭はまた歩き始めた。「ねぇそろそろいけにえの時間じゃない?」「麗はもう気にしなくていいよ」「私、本当に逃げて良かったのかな?私が死事で明日を迎えられるならいけにえも悪くない…」「だめだよ。麗の事必要としてる人もいるんだから。」「蘭…」麗と蘭はある家の前まで来た。蘭がドアを叩いた。すると中から背の高い男の人が出てきた。年齢は20歳くらいだろうか。茶色の髪が太陽に透けて綺麗な人だ。「秋斗兄さん」「蘭、お前どうしたんだ?」「実はね」蘭は麗の事を話した。「なるほどね。じゃあうちにおいてあげるよ。麗ちゃん。始めまして。」ニコッと笑った顔が蘭に似ているような気がした。「あの、蘭、秋斗さんは一体…」「俺の従兄弟。」