痛いの痛いの飛んでいけ
私は矢野日菜子! 「早く産まれたらなぁ。名前も、早く決めなくちゃね。」 隣でそういったのは、夫の矢野功介。 結婚して1年で、妊娠したの! 「うん!楽しみだね!」 私たちは幸せに暮らしている。 でも、妊娠して、もっと幸せになった! そう、嬉しく思いながら、この和やかな雰囲気を楽しんでいた。 「…痛、い…。」 いきなり、激しい腹痛に襲われた。 「うっ!」 ソファに、倒れ込んでしまった。 「大丈夫かっ!?病院行くか!?」 幸運なことに、その日は功介は仕事が休みで、家にいたから、すぐに病院に行くことが出来た。 ~病院~ 「もう少しで赤ちゃんが産まれますね。だから、お腹が痛くなったんでしょう。おめでとう!」 …!もう少しで産まれる…! 多分、功介も同じことを考えたと思う。 チラッと見たら、私と同じような、驚いた顔と、嬉しそうな顔が混ざって見えた。 赤ちゃん…。 嬉しい! でも、赤ちゃんを産むって、すごく大変なんだろうな。 ~産まれる時~ 「痛い!痛い!」 私は、そう叫んだ。 思ってたよりもずっと辛い。 「頑張れ!もう少しだ!」 功介は、そう言って私の手をずっと、握ってくれていた。 「痛いっ!うーー!」 「頑張れー!」 そう言ってくれる、功介と助産師さん。 「うーん、うーん!痛い!痛い!」 可愛い子が産まれてくるとわかっていても、そう叫んでしまう。 「もう少し!本当にもう少しだ!」 「うーん!」 「オギャア!オギャア!」 ……!!! う、産まれた…!! それは、可愛い可愛い女の子。 「頑張ったな!よくやったな!日菜子!」 「よく頑張りましたね!」 すごく、褒めてくれてる…! 私は、赤ちゃんを産んだんだ…! ~3年後~ 「痛い!うーーん!」 私は、また妊娠した。 2人目の子供だ。 そこには、3歳になった子がいた。優美だ。 赤ちゃんを産んだ後、2人で一生懸命考えた名前。 「優しく、美しく。」 これが、由来だ。 「うー!うー!」 私が辛くて、ずっと叫んでいると。 「ママ!ばんがれー!(頑張れ)」 そう言って、優美が、私の手を握ってくれている。 優美は、こう言った。 「痛いの痛いの飛んでいけー!」 …! そうだ。 私は、頑張れる。 痛いのなんて忘れて、飛ばして、頑張ればいい。 辛いけど、頑張れる。 娘と夫がいるからこそ頑張れる。 もう少しだ…! 「うーん!」 「オギャア!オギャア!」 産んだ瞬間、自然と涙が溢れてきた。 私が、頑張れる言葉。 頑張ろうと思える言葉。 私に教えてくれた言葉。 それが、私の胸に響いた。 それはー 「痛いの痛いの飛んでいけ」