キセキ
これは、叶わない願いだ。 キセキなどない。 ずっと、そう思っていた___。 ~智希目線~ 俺は佐々川智希(ともき)。今日は転校生が来るらしい。 転校生がありさだったらいいのに。 ありさとは、小さい頃に海の前にある俺の家の隣に住んでいた女の子。苗字は確か、きたがわだったと思う。 ありさとは幼馴染み。そして___初恋の人。 お揃いの貝殻のキーホルダー、まだ持ってるかな? ありさは俺のせいで…。 あ、転校生が教室に入って来た。黒板には〈北川有紗〉と書かれている。ありさ!?…違う人だろう。自己紹介の声。ありさに似てる…?「じゃあ、佐々川君の隣に座って」「よろしくぅ、北川さーん」いつも俺について来る清水麗美だ。しつこいんだよな、麗美。北川有紗が近づいて来る。ランドセルに付いた貝殻のキーホルダー。首筋の傷跡。もしかして…。「ありさ!俺の事覚えてないか?」「!?」「転校生困ってるよ、智希ぃー」…麗美のやつ。「…人違いかな?」やっぱりか。「ごめんな、変な事聞いて」「ううん」 そう、ありさがわかるはずないのだ。 5年前___。 俺とありさは散歩中、ボロボロの空き家を見つけた。 臆病だったありさを俺が好奇心から強引に入らせた。 でも、だんだん俺も怖くなってきて、空き家を出ようとした。 そして、ありさが空き家の入り口を出る瞬間___。 「ありさ、危ない!」 空き家の屋根から落ちてきたトタン板。 今までの記憶を失くしたありさ。 ありさの首筋についた傷跡。 そう、全ては俺のせいなのだ。 だから___。 ~有紗目線~ 数週間後 最近佐々川君はお休み。どうしたんだろう? 帰り際。 「有紗ちゃん」「何?」清水麗美ちゃんだ。「話があるんだけど」 校庭の隅。 「…ねぇ、元々智希の知り合いか何かだろうけど、あんまり智希に近づきすぎないで。私、智希の事好きだから」佐々川君の事、好きなんだ。っ…。え?何で苦しいの? 「!」 頭の中に記憶が流れ込んで来る。 小さい頃過ごしていたこの町。 近所で幼馴染みだったともくん___佐々川智希。 空き家の屋根から落ちてきたトタン板に首筋の傷跡。 貝殻のキーホルダー。 私は佐々川君___智希と幼馴染みだった。 私は記憶を失くしたままこの5年間を過ごしていたのだ。 「…ねえ」「何?」「私、智希の所に行ってくる」「え!?私、近づきすぎないでって…」「私、智希の幼馴染みだから」「は?何言って…」「信用できないなら智希に聞けば?あと、私も智希が好き!」「え、ちょっと!」 走り続ける。 君のところまで___。 ~智希目線~ 最近、俺は学校を休んでいる。 あの時の事件、全て俺のせいだって分かってた。 でもいざ、現実を突き付けられると。 …俺が普通に過ごしているのがダメなんじゃないかと思ってしまうのだ。 ピーンポーン。誰だ? ガチャっ。「!?…何」「智希、私の記憶が戻った」「!?」有紗が元に戻ったとしても…全て俺のせいだということは変わらない。「智希」「帰って」「何で?」「…あの時の事、全部俺のせいなんだよ。俺が有紗に関わる資格ない」「あの時は流石にイヤだったよ。でもやっぱり私は智希が好き。この気持ちは一生変わらない」「…」「私に嫌われたと思ってた?嫌いになる訳ないじゃん」…許して、くれるのか…?「有紗」ギュッ。「!?」「…俺も好きだ」有紗から離れて。「有紗、好きです。俺と付き合って下さい」「…はい」チュッ。!?え、今のって…。「いーい、これは私が智希が好き___私に嫌われてないからしてるんだからね。…それじゃあ、また明日//」 有紗が走りながら帰って行く。 その後ろ姿を見送ると同時に俺は体の力が抜けていった。 「不意打ちは反則だろ、有紗…。可愛すぎる…」 ずっと叶わない願いだと思っていた。 有紗の記憶が戻っても、嫌われていないか不安だった。 でも今、願いが叶った。 叶わない願いだと思っていても、時に叶うこともある。 俺は、本当はキセキがあると知った___。
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感想
智希目線と有紗目線で物語が語られるのがいいなと思いました! 有紗の記憶が戻って、両想いになれてよかったです!