私の気持ち
私の将来の夢は英語の楽しさを伝える事。中三になったばかりの春、配られた進路希望調査の将来の夢という欄にそう書いた。 人付き合いが苦手で、親友と呼べる人はいない。仲がいい子はいるけど、拒否されるのが怖くて友達のまま。そんな私が何もかもを忘れることが出来たのが、英語だった。学年に関係なく、頑張った分だけ先の教材に進むことが出来る。そんなちょっと特殊な塾で英語を小五で習い始めると、たちまちのめり込んでいった。そして中二で英検準二級を取った。 今日は教育相談。進路希望調査の紙を元に担任の先生と話すのだ。 「次、加藤さん」 先生の声が聞こえ、教室に入る。しばらくたわいもない話をしてから本題。 「詩葉ちゃん、将来の夢は英語の楽しさを伝える事なんだね。それって学校とかの英語の先生って事?」 学校の先生とは違う気がする。けれどうまく言い表せない。モヤモヤとした心を抱えたまま曖昧にうなずく。 「だから、長浜国際高校が第一志望なんだね。英語の面接は、私と練習できるから頑張ってね!」 そう、担任の横井友子先生は英語の先生なのだ。先生にさようならと言って、外に出る。窓の外から見える富士山には雲がかかっていた。 家に帰って大好きなガトーショコラに生クリームをたっぷりつけて食べる。お母さんとお父さんはカフェを経営している。私の得意料理はガトーショコラ。名前が「かとうしよ」ということもあり、最初に作れるようになったのがこれだった。カロリーが高いから週に一回で我慢してるけれど。 自分の部屋に入って、勉強机に向かうと春休みから考えている、あの問題について考える。 三月上旬、家族みんなでリビングにいた時のこと。私が長浜国際高校の資料を見ていると、お母さんが話しかけてきた。 「詩葉、その高校に行きたいのは分かった。で、将来はどんな職業につくの?ただ英語が好きなだけなら、外語大に行けばいいでしょう?将来のことを考えて。 それがはっきりしなければ、通わせられない」 お母さんの言うことはもっともだ。うつむいて、うなずいた。 それで英語を生かせる職業を考えた。CAも外資系企業もピンとこない。自分の今の心に近いのは、英語の楽しさを伝える事。…でも違うのだ。自分のやりたい仕事は。そんな気持ちを抱えたまま、お母さんに、将来したい仕事は英語の楽しさを伝える事と言った。