自分
気がつくと、暗闇の中にいた。周りを見渡しても、あるのは深い闇と自分の死体だけだった。 うざかった。ずっと泣いてばかりいる弱い自分がうざかった。だから殺したんだ。 「これで、弱い奴はいなくなった。ずっとずっと憧れてた自分になれるんだ!」 思いっきり笑った。すごくいい気分だった。 あいつを殺してから1年ほど経っただろうか。まだあいつの性格が残っているらしい。すぐに泣きそうになる。気持ち悪い。すぐに消さないと。 あいつを殺して5年経った。あいつの性格もほとんど消えた。友達もいっぱいできた。 あいつを殺して何年経っただろう。目の前にあいつがいる。なんで。殺したのに。 きっかけは一度だけ流した涙だった。涙を流す度に殺すのはなかなか骨が折れる。 なら、受け入れてやろう。 ただ、あいつを友達の前に出すのは難しかった。あいつを見せようと思っても、どうしても反射的に私が出てきてしまう。だから、あいつは私と2人きりのときにしか出てこない。 そういえば、私はあいつを殺して「自分」の体にいる。だが、元からあいつは「自分」の体にいた。つまり、あいつは本物の「自分」。私は…偽物? 今。好きな娘ができた。私は、同性の相手を好きになった。彼女は絵がうまくて、好きなことには一生懸命だ。 一度、同性愛をどう思うか聞いた。すると、 「『好き』っていう感情をもつ相手は自由だし、いいと思う。」 と返ってきた。嬉しかった。 ただ、彼女にも好きな人はいた。当然、異性の。 それはそうだろう。同性愛に理解があるとはいえ、彼女自身が同性愛者というわけではないのだから。 それに、例え告白がうまくいっても、いつかはあいつの存在を明かさなければいけない。ずっと私を見てきた彼女があいつを受け入れてくれるだろうか。気持ち悪いと思わないだろうか。絶交されないだろうか。それが不安だった。 ずっと、あいつは1人なのだろうか。なら、もう殺したほうが楽なのではないか。 そう思って、私はまた包丁を手に取った。