若宮ばあや食堂
『ばあや...生姜焼き定食頼むね』 私は、一児の母。もう私は、子育てに疲れ切っていた。 何故なら、早くても寝れるのは11時だ。それも、寝れたとしても、夜泣きで起こされる日々は、もう嫌で。今日は夫に、子育てを全て任せてしまった。私がしないといけないのに。 若宮ばあや食堂は、私が生まれる前からあった...だけど、入ったことはない。貧乏だったからだ。もやしを買うお金すら、ない日もあった。 「あいよ!ちょっと待ってな」 だけど、やっと私も稼ぐの。大人になるの。 はぁ、いい香り、今日は、お味噌汁かな。 若宮ばあやは、10分を待たずとも料理を作りあげた。 「若宮ばあやの特製生姜焼き、食べていきな」 『頂きますっ』 私は、一口だけ口に運ぶと、ほろほろと涙が溢れる。 お肉の旨味、お味噌汁はほっこりした、少し薄い味付けで、私の心を溶かしてゆく。もう、私の箸を持つ手が進むことはなかった。止まったと思えば、生姜焼きはどこかに消える。 「ばあや、ありがとう」 私は、500円のワンコイン定食を、100円多く渡し、帰宅した。ほんの、些細なお礼として。 『ばあや...さん?ハンバーグ定食あるかい...?』 俺はサラリーマンだが、上司に怒られてばかりだ。もう駄目だ、俺は。 「あいよ!ちょっと待ってな」 ばあやは、10分も待たずとも料理を作り上げた。 「若宮ばあやの特製ハンバーグ、食べていきな」 『あぁ、頂くよ』 皿の上にはハンバーグとレタス。みそ汁とご飯という、シンプルな構成が、俺のどこかをくすぐる。 母さんの料理だ。おれの母さんとそっくりだ。もう、いないけどな、ははっ... 俺は口に運ぶと、ほろほろと崩れる肉の壁。俺の心の中の壁も壊されて。 波がきたように、そこへ温かいスープが押し寄せる。俺はもう箸の手を止められない。止まったと思うと、ハンバーグはめっきり、消えていた。 「ばぁや、ありがとよ」 俺は涙をこらえ、ばあやに500円と、財布の奥にちょこんと残っていた5円もついでに支払う。ほんの、些細なお礼として。 一児の母とサラリーマンは、また次の日、若宮ばあや食堂を訪れたが、休刊日の張り紙が張られていたシャッターが、それから上がることは無かった。
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すごい!
いいですね、若宮ばあや定食 「10円や5円のお礼がある」というのがいいですね おいしそう...w 貧乏だったというのを、安い「もやしを買うお金すらない日もあった」と、ちがう言い方をするのも良かったです それと、「あいよ!ちょっと待ってな」や「若宮ばあやの特製○○、食べていきな」など、一人目も二人目も同じ様な言葉を使っているのもいいなと思いました 温かいお話、ありがとうございます
(≧▽≦)
表現上手い! なんか、美味しそうな感じがした!!あ…よだれが…(^q^) 食の大事さが…ハアハア伝わって…ハアハア たまんないわぁ!! すごーい!!
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とても良かったです!タイトルにも惹かれました。最後の文から読み取るとばあやは店を閉めちゃったんですかね。売り上げが少なかったとか。または…。これは考えたくありませんね。死とかは。とても面白かったのでまた書いてください!
面白い!
面白いです! ただ、最後の文が気になる。ばあやはどうなちゃったんだろう?