キャラ作り
僕はいろいろなキャラを持つ。学校でのキャラ、塾でのキャラ、家でのキャラ。おかげで本当の自分がわからなくなる。だけど、もうしょうがないんだ。こうやって社会を生きていくしかない。 通っている塾に新しい子が入ってきた。 栗色の髪はおそらく地毛。茶色の瞳に赤い唇の綺麗な女の子だった。僕と同学年の高校二年生。小学校の頃から男子校育ちの僕には新鮮だった。名前は小夜(さよ)で、近くの名門女子校に通っているとのことだった。 「よろしくお願いします」 そう頭を下げた小夜さんはいかにもお嬢様然とした聡明な感じがした。そして、周囲と自分が作り上げたキャラクターを演じていないようにも見えた。そして、小夜さんが作った清楚な笑み。それは僕の何かを壊した。 完璧じゃなくたっていいのさ。誰にも負けない熱い想いがあれば。 僕はそれから自分が勝手に作り上げたキャラ壊すことを試みた。でも、それはなかなか上手くいかない。それは当然。だって、小学校の頃から同じキャラクターできたんだからもはやそれが僕の中でも当たり前になっていた。でも、もう嫌だった。色とりどりのマスクを被って偽りのキャラを演じきって。そんな毎日はなにも楽しくないし、収穫もないし、益といったら世渡り上手になれるくらい。そんなんじゃ本当の自分が分からなくなる。 ある日。学校帰りに小夜さんと会った。小夜さんはやっぱり塾と同じように自然体でいた。 「小夜さん、こんにちは」 「こんにちは、翔真(しょうま)くん」 それだけ交わして僕は小夜さんと別れる。 いつか、小夜さんみたいになれたらいいな。いや、なってやる。 そう思って空を見上げる。久しぶりに眺めた月はとても美しく、とても大きかった。それこそ小夜さんのように。