一番じゃなくて、自分の一番
私は勉強が得意だった。運動神経も良かった。顔はかわいらしい顔つきだった。裁縫もケーキ作りも得意だった。 「完璧じゃん。」 そう言った? いいえ。そんなことないわ。どれだけ勉強できても、どれだけ運動神経がよくても、どれだけかわいくても、裁縫がケーキ作りが得意でも、 一番じゃない。 一番じゃなきゃ、なにができようができまいが意味がないもの。 そんな複雑な思いを抱えながら、今日も学校に行く。 「つばさ、おはよう!」「楓、おはよう。」 楓は大の大親友。優しくて、人付き合いが得意なんだ。楓の父母は『鳳凰』という旅館を営んでいる。楓の将来の夢は旅館を継ぐことなんだって。 「そうだ、つばさ。うちの旅館でさ、夏の旅館のイベントをやるんだけど家族でこない?自信あるからさ!」 「え、本当?行きたいな。夏休みのこと?」「うん!」 「わかった。ママとパパに相談してみる。」 「やったぁ!ありがと、つばさ!」 本当に旅館の話をするときの楓は幸せそう。 夏休み。 パパの自慢の車から降りた。 わぁ~。実はここ初めてきたんだけど本当に綺麗…。 「いらっしゃいませ。お待ちしておりました、青木様。 お荷物をお持ちいたします。」 楓に似た人が声をかけてくれた。あぁ、楓のお母さんだな。 「お部屋にご案内させていただきます。」 あて?そういえば楓はどこかな? 「何かございましたら、なんなりとお声かけくださいませ。」 小さな人がちがう客に挨拶をしている。若草色の帯に真紅色の着物、ところどころにまりの模様が入っている。 「あ、楓!」 誰かと思ったら楓だった。ビックリ! 「あ、つばさ。あ、ご家族で来ていただいてありがとうございます。どうぞ、この旅館をお楽しみください。」 にっこり笑って楓が去っていった。あれはもう、旅館の人だ……。そのあと夕食を食べても、眠ろうとしても、一泊二日の旅行を終えても、あの綺麗なお辞儀と自然な笑顔を忘れられなかった。 夏休みあけ。 「つばさ!おはよう。旅館来てくれてありがとね。」「あ、楓。ううん。良かったよ。」「ホント!ありがとう。」 「ねぇ、楓。」「ん?どうしたのつばさ。」 「楓はもう一人前だね。あんな綺麗なお辞儀も自然な笑顔ももう一人前、いや、旅館の中の最強かもね。」 「そんなことない。私はいつも失敗ばっかりだし。毎日、おかみさん…お母さんに怒られているもの。」 楓には珍しくまっすぐな言い方だった。 「本当?そんなことないでしょ。」「ううん、そんなことばっかり。……ねぇつばさ。」「ん?」 「私は旅館の仕事はイマイチだし、変な失敗ばっかりするし、いつも怒られてばっかりいる。でもね、……」「……?」 「お客様をこの旅館で笑顔にして帰ってほしい。私たちよりいい旅館はいくらでもあるわ。けれど、お客様が『鳳凰』という小さな旅館で楽しんでくれればそれで十分。たとえ一番じゃなくても自分の最善をつくせれば、それでいいと思うの。」 …楓。楓はいつもおっとりした言い方だが、今回は熱のこもった言い方で、いや…、自分の心を言葉にあらわしているようだった。 一番じゃなくても、最善をつくせられれば、それでいい……。 そっか、私は一番じゃなきゃだめって思ってた。けど、違った。自分の最善をつくせれば、それでいいんだ………、そっか……。 「つばさ、教室に行くよ。」 「待って!私も一緒に行く!」 一番じゃなくてもいい、自分の最善をつくせられればそれで十分。 私の身体の周りにあった固いベールが一枚はがれた気がした。
みんなの答え
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ありがとう!
ハロー! リノリンゴです! タイトル通り、ありがとう! 私、委員長に立候補しようと思ってて、受からなかったら…とか考えちゃうけど、この話を読んで、最善を尽くして自分の思いを伝えようって明るくなれた! 本当にありがとう!
すごい!
すごいですね! 主人公の気持ちが伝わってきます。 私もこんな小説書きたい!
ナンバーワンとオンリーワン!
なんか、一番じゃなくていいってほっとしますよねぇぇぇ…。 もう私6年だから受験で…。 一番じゃなくていいってことが嬉しいです! 辛くなったらこの物語読みます!