繰り返される今日
「音花、目を覚ましてくれ!お願いだ!音花!」 ごめんね、一希。私、もう向こうの世界へいかなきゃいけない。ありがとう。あなたと過ごした時間はとても楽しかった。さよなら。 「おいっ嘘だろ!?音花あああ」あれ?変なの…なんか、異次元に吸い込まれていくような感じ…人って、死ぬときこんな感じなの? 気づくと、私は彼氏の一希(いつき)の隣を歩いていた。あれ?私、確か…車に轢かれたはず。道路に飛び出した子供を助けて。「どうしたの?音花(おとか)、なんかあった?」あれ、この景色、轢かれたときとおんなじ景色……もしかして、時が戻ってる?「音花?」「あっ何でもないよ。大丈夫、私は大丈夫。」「そう…」あっ、ボールが道路に転がってった。「!?」子供が道路に飛び出した!ヤバい、あの子、轢かれる!「危ないっ」子供に向かって走り出す一希。「一希!?」一希、行っちゃダメ、轢かれちゃうよ…!「ピピーッピピーッ」「いやぁー!一希行かないで!」「バーーンッ」「嘘、でしょ…?」一希がピクリとも動かない。「一希っ一希っ一希っ!!」 私はショックすぎたのか、その場に倒れてしまった。 目を開けると、さっきと同じ景色。今度は、一希が青ざめた顔でいる。 一体どうなってるの?もう何がどうなってるのかわかんない。 その時、私の目には子供が道路に飛び出し、車が来ている見覚えのある光景が映った。「危ないッッ」私は子供に向かって走り出した。後ろで一希の声が聞こえる。「音花、行っちゃダメだ!」そんな言葉を無視して、私は子供を抱き上げ、車に背を向けた。「バーーンッ」車に轢かれた瞬間に甦る、事故の記憶。衝撃や音、痛み、全部体が覚えていた。そのまま私は、意識を失った。 私は、気がつくとベッドに横たわっていた。体を動かそうにも、激痛が走って動けない。ベッドの横には、一希がいた。なにか言ってる。「音花、何で、お前が、酷いめに遭わなきゃいけないんだよ…どうして…」一希の言葉が途切れる。「何回『今日』を繰り返しても、どっちかが死んでしまう…運命は、変えられないのか…?」そう一希が言った瞬間、私の頭のなかでずっと解けなかった謎が、解けた。ずっと『今日』を繰り返していたのは一希だったんだ。運命を変えようとしてたんだ。私は出せる限界の大きさの声で言った。「一希、きっと、これが私たちの運命なんだよ。やっぱり、運命を変えることはできないんだと思う。だから、一希、いい人見つけて、幸せになって。来世でまた会えるよ、きっと。だからもう『今日』は終わりにしよう?私、あなたといてとても楽しかった。短いけど最高の人生だったよ。ほんとにありがとう。そして、さよなら」一希はなにも言わず、私の言葉を聞いていた。その数秒後、私の心臓は止まった。私の反応が無くなったことに気づいた一希が言った。「嘘だろ?おい、音花、返事してよ。音花、音花っ!うわぁぁぁぁぁぁ」泣き叫ぶ一希。帰らぬ人となった私。残された一希があまりにもかわいそうで、見ることができないくらい悲しくて、何を言っても一希には聞こえないけど、私は呟いた。「きっと会えるよ、また。会いに行くよ。…だから、…泣か…ない…で…」私の頬を涙が伝っていった。その時、一希が言った。「音花、ありがとう。俺、これからも笑顔で生きるよ。天国で、来世で、また会おうな。約束するよ…音花、さよなら…俺、ずっと笑顔でいるから!」その一希の顔は涙で濡れていたけど、無理やりつくった感じだったけど、約束通り、笑顔だった。
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