「好き」
ああ、好きだなあ。 あなたを見るたびに思う。 風を切って走る姿が好き。 控えめに挙手をする姿が好き。 仲間とわちゃわちゃする姿が好き。 私の知る限りのあなたが、全部好き。 この気持ちを、あなたにそっくり言ってしまえれば、どれほど楽だろう。 どれほど幸せだろう。 でも、私にはできない。 勇気がないから。覚悟がないから。あなたの好みじゃないかもしれないから。 心の中で、好きを唱えるだけ。 愛してるって、心の中で唱えるだけ。 かなわぬ恋だと分かっていても、「好き」は心にたまっていく。 忘れようとしても、無かったことにしようとしても。 やがて、私はあなたを「推す」ようになった。 溢れた「好き」の言い回しだ。 私はドルヲタであることを周囲の人に言っていたから、 「『あなた』を推しているんだ」 と言っても、別に怪しまれなかった。 私が、あなたをアイドル的なものとして見ていると思ったからだろう。 あなたも「推してくれてありがとう」と言って、 私の「好き」を別の意味で受け入れてくれた。 私は、たった二文字の「好き」さえ言えない自分に、少し哀しくなった。 今日も私は、あなたを推す。 恋としての「好き」を隠して。 見てくれてありがとうございました。 あなたの恋が実りますように。