月光(ムーンライト)と日光(デイライト)
僕は月だ。昼は輝かない、月だ。 また三球三振。光はすごいやつだ。第四の壁の先のみんなに説明しておくと僕の名前は「月読陰(つくよみかげる)」だ。光というのは「日神光(ひかみひかる)」のこと。 僕たちは同じ高校の野球部、どっちもピッチャーだ。決定的に違うのは、投球スタイル。 僕は下投げから所謂「七色の変化球」を投げるピッチャー。でも球は遅く、打たれることも少なくないし、メンタルも弱い。 それに対して光は本格派。マックス172キロとか人類最速レベルのストレートを投げるし、打てばホームラン、選んでも重盗。165キロで曲がるスライダーとか聞いたことない。そうでしょ?みんなも。まるで僕は太陽のように自分では輝けない月だ。 今日は地区大会の二回戦。冒頭の試合はもう昨日の話だ。このスペースで場面が変わったのはわかるだろうか。相手は塑令成高校(それなり高校)。読める?一応甲子園常連校。 一回の裏、光は160キロのフォークボールで三者連続三振。二回の表。ノーアウトでフォアボールで出塁した彼は、二塁、三塁と盗塁を決め、ホームスチールも決行。余裕で一点をもぎ取った。同じ人間とはとてもだが思えない。 流れは四回の裏で変わった。敵の監督は突然、 「ボールを見るな!感じろ!見なければ打てる!惑わされるな!」 と叫んだもので、つい思わずあほくさと呟いてしまった。そう思わない?でもまさか。 敵の一番がツーベース。二番が送りバント。でもサードが落とす。一類も三塁もセーフ。四番に満塁ホームランをもらい逆転される。 どうやらタイミングを見切られたようで、なんとか抑えたけど12失点。あり得ないでしょ?現実的に。でもさすがに明るい光も落ち込んでいた。光ならホームランで挽回できるよ、そう声をかけようかと思った。でも僕だ。昼には輝かない月が太陽に声をかけることなんて。 ところが五回の裏、光が 「お前の出番だ、陰!」 と肩に手をのせてきて言った。僕は孫悟飯じゃないよ。いいのか、マウンドに戻れないぞと聞いても 「お前の出番だからな。」 としか言わない。 「おし、打てよ。」 敵監督の呟きだ。 僕はしっかりキャッチャーミットを見て、スローカーブを投げる。空振り。 次にストレート。掠りはしたがミットの中。最後にチェンジアップ。ストライクぎりぎりのインコースに投げ込む。反応できないバッターはアウト。 「バカな!?なぜ打てない!?」 170キロと120キロ。緩急がすごい。目がなれてないんだろ。おまけにアンダーだ。なかなかボールの軌道もつかみにくいだろう。 9回裏、ツーアウト。一点差、バッターも目が慣れてきたようで不覚にも満塁。 「お前はお前のボールでいい!俺を目指すな!」 ベンチからの光のアドバイスが聞こえる。そうか。僕は自信がなかった。最強のピッチャーを目の前にして、自分を見失っていたのか。 光みたいになりたいと思って封印していたやつを投げよう。そう決意した時には一球目を投げていた。 そのボールは手元で二回、三回曲がる。幻惑するように曲がる。ナックルだ。 二球目も同じ球を投げる。ぶれるように歪むようにふらつく。 三球目。バッターはこれがもう一度来ると思い振ったのだろう。実際投げた。でも空振り。ゲームセット。 試合が終わった後、光に聞いてみた。 「なんで、僕を試合に出した?光ならホームランも打って挽回できただろうに。」 「ごり押しだけで勝てるなら苦労しねーよ。俺も延長十五回まで投げられるかっていうなら無理だしな。人間だから限界はあんだよ。」 それでもなんで交代した?その答えは、 「日中は月は光れない。それは事実だ。しかも太陽がないと月は光れない。」 やっぱりか。 「でもな、太陽は夜を照らせない。太陽がいないとき、太陽が頑張れないときに月は輝くんだ。 月も太陽もお互いがセットでいなきゃだめなんだよ、って思うぜ。」 僕はボールを握り直し、 「わかった、お前がいないときは頑張ってやるよ。」 とだけ言って帰った。 まだ地区大会は二回戦が終わったばっか。 僕は月だ。昼は輝かない、月だ。でもそれは夜を輝かせるためにある。役割はあるんだ。 今は街灯あるからいらない?そんなことじゃなくてさ。 メタい主人公からの短編野球小説でした。感想もお願いします。ありがとね。
みんなの答え
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かっこいい!
めっちゃいい!面白かったです!まず登場人物の名前とその人の性格?を合わせてるのがおしゃれです笑 自信のない「月」が「太陽」に背中を押されたことで自分の居場所とか輝き方に気づいていく...って感じでしょうか。陰くんの内面の変化がはっきり感じられたし、最後まで話がスッキリまとまっててなんかとっても読みやすかったです! ...って上から目線でだらだら書いてしまいすみません! 他の作品も読んでみたいのでまた何か書いたらぜひ載せていただきたいです!