泡沫の人魚姫症候群
沈む。ここがどこかわからない。ただただ沈む。ふと、冷たく硬い感触がした。すると私は泡沫の如く消えてしまった。 「…さん、日和(ひより)さん。」 「…小雪?」 目が覚める。どうやら寝てしまったようだ。前の席の小雪が起こしてくれた。 「良かった、二度と目覚めないのかと思いましたよ。なんだか苦しそうでしたよ?どんな夢だったんですか?」 「えっと…沈んでる夢。というか、また敬語なってるよ。タメ語でいいって言ってんじゃん。」 と私は小雪にデコピンをくらわす。 「いでっ!え、あ、すいません!」 とおどおどしながら小雪はまた前を向いてしまった。唐突だが、私は小雪が好きだ。いつもはおどおどしてて、なんか目立たない。しかもちょっとドジ。でも、私は知っている。小雪はみんなの気づかないところで頑張っている。私はそこに惚れたのだ。 キーンコーンカーンコーンっとチャイムが鳴り、先生が入ってくる。挨拶をし、席に着くと眠気が私を襲った。 (あ、あれ?なんだかとても、眠くな…る…) と、私は眠ってしまった。 沈む。まただ。またこの夢。すると、声が聞こえてきた。 「こんにちは。僕は魔女。早速だけど、君は奇病にかかっている。その名も、泡沫の人魚姫症候群さ。」 声を出そうとする。が、声が出なかった。幸い、視覚はある。その魔女と名乗るものは、足がなく、魚の尾鰭のようだった。これを例えるならまるで…人魚姫に出てきた魔女だ。魔女は、本を開いている。 「ごめんねぇ。僕、奇病は専門外なんだー。えっとこの病気は君、片想いをしているだろう?その人に、想いを告げ、両想いにならなければ君は泡になってこの世にいた存在自体が消えてしまう。タイムリミットは3日。ただ、これにはもう一つ回避方法があるんだ。それはね…片想い相手が死ぬこと。」 私はこの言葉に耳を疑う。小雪が死ぬと私が助かる?ダメだ。想いを告げてしまおう。 「ジャッジャッジャァーン!君にいいこと教えてあげる!明日、古守小雪は死ぬ。」 …は?小雪が、死ぬ?口が動けば、私は絶望の嗚咽が漏れていただろう。 「じゃあねぇ~。まあ、明日古守小雪が死ねば、君は来ないだろうけれども。」 と言い残し魔女は消えてしまった。私はいつのまにかこの空間の底に来ていて、またあの時の冷たく、硬い感触が感じられた。 「氷室!起きろ氷室!授業中だぞ。」 と先生が私のことを起こす。微かに笑い声がくすくすと聞こえる。私はショックで何も声が出なかった。 次の日の朝。私は小雪の家に行く。小雪の家は私の通学路にあるので、一緒に行くことが可能だった。小雪の家のチャイムを押す。 「はーい。って日和さん?」 「ごめんねいきなり。一緒に登校したくってさ。」 「いいですよ。僕も一緒に行きたかったところなので。今、おりますね。」 数分後、小雪が扉を開け、出てきた。小雪は特に何も変わらず、いつも通りだった。小雪がいつ死んでしまうかわからない状況。私は緊張感で背筋がピリピリした。 交差点。小雪が半分渡ったところで、私は口を開く。 「小雪、あのね…私…」 「なんですか?」 と、小雪が立ち止まる。すると、ふと視覚に入ってきた車が小雪の方に走ってきているのがわかった。 (居眠り運転っ!?) 「小雪っ!」 と私は走り出し、小雪を押す。次の瞬間ドンっという鈍い音が聞こえたかと思えば、今まで感じたことないぐらいの痛みが全身に走る。 自分の体が冷たくなるのと同時に紅色の体液の生暖かさが感じられて、気が遠くなる。 「こ、ゆき、私は…こゆきのこ、とが、す…」 とここで意識が途絶えた。最期に見えたのは、小雪の顔だった。 沈む。ただただ沈む。あの魔女の声が聞こえてきた。 「はぁ、人間って愚か。あのまま古守小雪を殺せば良かったのに。」 今は、口が動く。私は笑みを浮かべて、魔女に言い返す。 「はは。だよね。私も愚かだと思うよ。でもね、ぜんっぜん後悔はしていないの。この選択に。まあさ、想いを伝えられなかった少し後悔してるけど。」 すると魔女は呆れたように、 「はぁ…。これは人間がおかしいのか。それとも氷室日和という人間がおかしいのか。どっちにしろ、僕の理解に欠けるね。」 と言い、消えていってしまった。 「…小雪ごめんね。私先に逝くけど、小雪は幸せに生きてね。」 また冷たく、硬い感触がした。そして、泡沫の如く消えていった。
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なんか新鮮!
なんだろ…あんまり見ないタイプのお話で、どことなく新鮮でした。面白かったです! 魔女さんの他人事のような口調が効いてるなって思いました。嬉しいお話とも悲しいお話ともつかないような雰囲気が好きです。 作者様、素敵なお話ありがとうございました♪
面白かったです!
どうも、鈴木爆撃機です。 面白い小説でした。 何か、切なさと何か言い得ない感情が入り交じって不思議な感情になりました。 ただ、二つほどダメ出しをしても良いなら「話のテンポが早すぎて読者がついていきづらい」のと、「少し厨二病臭い」点ですかね。 上から、辛口すいません。 あなたの小説は個人的に応援しているので、頑張ってください!