君はスーパーヒーロー
ああ、また始まった。 休み時間になると必ず聞こえてくる、鋭くて暴力的な罵声。 それは、生徒指導の先生が怒るときのモノマネだったり、誰かへの悪口だったり、あるいはお互いに罵りあったりといった声だった。決まって男子数人、それも、私の席からそう遠くない場所で、いつも。 「お前バカかよ」「はぁ? 誰がバカだよ雑魚」 それは別に私に対しての悪口ではないし、きっと周りのことなんて気にしていない。けど、決して聞いていて気持ちの良いものではない。それに、私は大きな声が苦手だった。治しようのない、性格みたいなものだと思う。 耳を塞ぎたくなるような声。「やめて」の一言が言えたらいいのに、近寄ることすら出来なくて、そっと自分の席を離れる。出来るだけその集団から離れた窓辺に寄って、ぼーっと外の景色を眺めた。 早く休み時間終わんないかな。窓の外では校庭でサッカーをする同級生の姿。あの人たちも外に行って無邪気に遊んでくれればいいのに。声が耳に入らないように、意識を外にやりかけた、そのときだった。 「そういうの、迷惑になるからやめろよ」 反射的に教室の方へと視線が向いた。 声の主は、確かいつも例の集団と一緒に話している、男の子。名前は……ああ、古川くんだ。 「は? お前、何いい子ぶってんだよ」 「そういうんじゃねぇよ。よくないだろ、悪口言うのとか。いじめになるかもしれねぇし」 完全に一対複数の構造ができている。このままじゃいけない。 「いじめ? いじめってこういうことか?」 そう意地悪く言うと、集団の一人が古川くんを軽く蹴った。 ……暴力だ。 「ほんと、やめろって」 それなのに、古川くんは逆上するでもなく、必死に呼びかけ続けている。 止めなきゃ。そう思うのに、足は窓際にとどまったまま動こうとしなかった。 「お前、いつからそんなうぜぇ奴になったんだよ」 「行こうぜ、マジめんどくせー」 捨て台詞を吐いて、その集団は教室からようやく立ち去った。 その一部始終を、私以外にも見ていた人がいたはずなのに、みんなはぎこちなく元の空気に戻っていった。 ……古川くんまでもが、ばつが悪そうな顔をしている。 何も悪いことしてないのに。 その様子が見ていられなくて、私は古川くんに恐る恐る声をかけた。 「あの、さ」 ゆっくり古川くんは振り返ると、「なに」と不機嫌そうな声で応えた。 「うまく言えないけど、かっこいいと思うよ」 不機嫌そうな顔がみるみるうちに疑問の表情へと変わっていく。わからないのも当然だ、何やってんだ私。 「……さっきの?」 「う、うん」 首を縦に振って、そのあと言葉が続かなくて、お互いに沈黙した。 気まずい空気がしばらく流れる。 「あんなの、冗談に決まってるだろ」 「え、さ……さっきの?」 今度訊いたのは私だった。きっと今の私の表情も、疑問の色で満ちている。 冗談……なわけがない、はず。だってあの時の古川くんは、普段のムードメーカー的な表情じゃなくて、もっとこう、キリッとした表情をしていた。そう言いたいのに、言っていいのかちょっと迷って、再び沈黙。 「でも、その……ありがとな」 そっぽを向いて、小声でぼそりと古川くんはつぶやいた。が、私の耳には届いていた。 気まずさごと飲み込むように、古川くんは水筒を取り出し、勢いよく水を飲んだ。それを合図に私もそっとその場を離れる。 元いた窓辺からは、グラウンドから教室に引き返す生徒の姿が映っている。 程なく予鈴が鳴って、私は静かになった自分の席についた。
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かっこよ…!
古川くん好きです(唐突w) 私のクラスにも古川くんみたいな人がいればなぁ…って思ってしまいました。 古川くんと主人公の女の子が出した勇気がクラスを少し変えたんじゃないかな、って思いました。 すごく良かったです!
めっちゃ面白い!
ぱっと読んだけど面白かったです! 何と言うか表現がエモい!! 時間がある時にまたじっくり読みます!
なんかすごい!
ボソッと止めてくれるかんじ かっこいいですね( ´・∀・`)