連れ添い猫
雪の降る夜、黒猫が1匹おりました。わたくしが公園のベンチに寝そべっておりましたところ、その黒猫がやって来てわたくしにこう尋ねたのでございます。 「もし、お前さん。横に座ってもよろしくて?」 「あぁ、もちろんですよ。」 わたくしは起き上がって体についた雪を払い、黒猫はわたくしの隣に座りました。 「せっかくお休みなさっていたところ、すみませんね。私はね、先ほどまでこのあたりで休憩するところを探していたのですがどこもかしこも雪がうっすら積もっていましてね。そんなところには座りたくないと思っていましたら、おたくが寝そべっているベンチが見えまして、ついついお声がけしてしまいました。」 「なに、あなたが謝ることはございませんよ。わたくしだけのベンチではありませんから…ところであなたはこの街に何用で?」 「実は私、こう見えてもしがない連れ添い猫をやっておりましてね。連れ添い猫、ご存知?お知りでなくとも無理はございません。何しろ知人の紹介でしか動きませんからね。ですが、とてもいい仕事なのですよ。皆さん旅立ちの日に連れ添う者を求めておられますからね。1人で知らぬ土地へ行くのは不安なものでしょう。今回もその仕事でやってきたのですよ。前回私が連れ添った方からお願いされましてね。」 「素敵なお仕事ですね。わたくしめなんぞは帰路を思い出せずに迷ってしまう始末で…ですからこのベンチで一眠りしようと思っていたのです。」 「おや、あなたは迷っておられるのですか。もし良ければ私がおたくの家を探して差し上げましょう。全国1軒1軒の地図は全て頭に入っているのですよ。あなたはもう私の知り合いですからね。依頼してくだされば引き受けますよ。」 「あぁそれはありがたい。ではぜひお願いしたいです。名は佐藤と申します。」 「佐藤さんですね。少々お待ち下さいな。ふむ…見つけました。こちらです。」 黒猫はトコトコと歩き始め、わたくしはその後をついて歩きました。数分の後には我が家に帰っておりました。 「佐藤さんの家に到着しましたよ。私も家に上がってもよろしいかな。」 「あぁ、なんとお礼を申し上げていいか。もちろん、お上がりください。中で暖まっていって下さいな。」 わたくしは何とも久しぶりに家に帰ってきた気がいたしました。家に入ると中は暗く、家族は寝ているようでした。ですが、リビングに行きますとお姉さんが一人宙を見つめて座っておりました。 「お姉さん、帰ってまいりました。遅くなり申し訳ありません。」 ですが、聞こえていないのかお姉さんは動きませんでした。何度呼びかけても答えません。黒猫が言いました。 「近くに行っておあげなさい。最後のご挨拶です。最初から私はこのお姉さんに依頼され、おたくを迎えに行ったのですよ。」 「どういうことでしょう?」 「おたくはもう亡くなっているのです。」 あぁ、そういうことか、と合点がゆきました。帰路を思い出せなかったのも行くべき場所がここではなかったからなのですね。そうか、そうか。そしてお姉さんは最後までわたくしの心配をしてくださったのですね。ありがとうございます。わたくしは今、旅に出ます。 日本語の難しさを再認識しました…良ければ感想お願いします!!
みんなの答え
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すごく好きです
「~おりました。」って文体大好き人なので大喜びで読みました。 お話、文の運び方、何もかもが己にドンピシャです。 読み返して、「旅立ちの日」っての見て、あああ伏線かあ~!!となりました。すごく良い小説だと思います。 己もちょこちょこ書いてみてはいるのですがなかなかに難しく。 こんな良い物を作り出せるあなたを尊敬します。
うゎ~ スゴ
こんにちはハムスターです こういうお話大好きです!
あぁ...好きです。
タイトルに惹かれてやってきたら、私の好みどストライクな小説でビックリしました。 文章の書き方、ストーリー、言葉選び全てが好みです。 「~(で)おりました。」で終わる文の作り方は難しく、読みにくいものが多い印象でしたが、ももりんこさんの『連れ添い猫』はとても 読みやすかったです。 私もここで最近小説を書き始めたので、ももりんこさんの様な素敵な作品を書けるよう見習いたいですね。 素敵なお話をありがとうございました。
最初から最後まで良かったです
喋り方、言葉遣いが丁寧で、読んでて楽しかったです。 最後に、今までの佐藤さんや黒猫の言動の理由が分かってスッキリしたというか面白かったというか…… とにかく、僕の好きな雰囲気の小説でした! 構成も綺麗で良かったです!
おぉ……すき……
全体的に好きです。 言葉遣いとか、表現とか、発想とか…‥ 読み返すと、 『旅立ちの日』など、伏線っぽいのがあって、 よく考えられているなぁ、と思いました。 『前回私が連れ添った方』って佐藤さんの家族かな、友達かな、と 想像していたら、お姉さんだったんですね。 伏線回収(?)が本当に上手くて凄いと思いました。 もしよければ、ぜひまた投稿してくださると嬉しいです。 喜びます!
はじめまして
ももりんこさん、はじめまして とてもいい小説だと思います!!!