もう一度。
その瞳に、ズクリと胸が痛む。 この人は誰だろう。そんな顔で、彼女は俺を見つめ続けた。 ・・・1ヶ月前。彼女は重い病を患い、昏睡状態に陥っていた。 放っておけばいずれ命を落とすが、今の段階で治療をすれば助かる。 だが、その代償に。 彼女は今までの記憶を、全て失う。 ・・・初めから、分かってた事じゃないか。全てを無くしても、彼女に生きていてほしいと願ったのは、他でもない俺なのに。 俺は、何で・・・ こんなに、傷ついているんだろう。 彼女はしばらく、ぼんやりと俺を見つめていたが・・・ ふと、その乾いた唇から、歌が溢れだした。 『空~は、青~く、澄み渡り・・・』 弾かれたように顔を上げる。 その、辿々しい旋律は。・・・彼女が眠っていた間、俺がよく、歌って聴かせていたものだった。 『あなたと~、二人、ふふん~ん・・・』 だんだんと、歌詞が抜けていく。 たまらなくなって、俺は被せるように歌い始めた。 病室に、頼りない歌声が響く。 彼女の歌から、歌詞が完全に無くなって・・・ハミングになって・・・ やがて、彼女の声が聴こえなくなっても。 俺は一人、思い出の歌を歌い続けた。 『あなたの~、幸せを・・・願ってる』 ・・・これが、最後の歌詞。曲が終わる。 彼女は小さく息をついて、笑った。 『・・・この歌、なつかしいなぁ・・・誰が歌ったんだっけ。とってもね、優しい声をしたひとなの』 涙腺が緩むのを必死で堪えて、そっと彼女の手を取った。 『何か、大切な事が、あったのに・・・おはようって、誰かに・・・言いたくて・・・』 彼女の表情から、ぼんやりした様子が消えていく。 彼女は顔を上げ、俺に微笑みかけた。 『そういえば・・・』 『あなたの、名前は?』 ・・・忘れてしまった。忘れられて、しまった。呆然と、俺は自分の名前を口にする。 『へぇ、そっかぁ。綺麗な名前ね』 ・・・初めて会った時と、そっくり同じ台詞。 そうか。記憶を失っても、彼女は彼女なんだ。優しい声も、肩をすくめて笑う癖も・・・何も、変わっていない・・・ 『あなたは、』 また、何かを尋ねようとする彼女。その言葉に被せるように、絞り出した。 『俺は・・・お前の事が、大好きだ』 ・・・もう一度、初めから。
みんなの答え
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とにかく、いい!
初めまして目高といいます! 題名からして面白そうだなと思い見ました すごい!記憶を失うという話は前にも見かけたことが何度かあります 二つありましたがほぼ同じような内容でした。でもこれは何もかぶるところがなくて同じテーマなのに全然違う雰囲気で良かったです 最初の「その瞳にズクリと胸が痛む」 というところからだんだんとその理由が明かされていくのが面白いと思いました それと「その代償に。彼女は今までの記憶を全て失う」の所は代償に でいったん切って、彼女は今までの記憶を全て失うを強調したのでしょうか?私はそんな風に感じました そして最後。悲しく、でも少し希望が混じった終わり方だと思いました。記憶を失って主人公の事は忘れてしまったけど彼女は、何も変わっていない。前までの優しい人なんですね それで主人公はもう一度彼女との関係を一からやり直す…みたいな なんか感動しちゃいましたストーリーが良いのはもちろん。その他 文の書き方が凄く良いと思います! 私も15歳に成るとこんなの書けるかな? 心配になってきました(汗)もし良ければまた小説書いて欲しいです さよなら
うわ~……切ない……
こんにちは! ましろです(*´∀`) 彼女が記憶を無くしてしまうというお話はよくあるんですが、睡さんの言葉で紡ぐこの小説、たまらんです(笑) なんかね、睡さんっていつもは独特の設定の中でお話を作り上げてる感じだったんですよ! 今回も設定がしっかり組み込まれてるという意味では睡さんらしいのですが、なんか!なんかね! いつもと違う気がして新鮮でした(´`*) ……涙腺が緩みますね、これ(笑) 本当に応援してあげたいです! これって二人カップルだったんかな? 彼女が記憶をなくす前は、素敵なカップルだったのかなぁと思うと…… 彼女さんの優しさ、それに主人公の優しさも表れている小説で…… 素敵な小説ありがとうございました!
待って睡ちゃん感動っ(泣)涙とまらん!
のおっ!こんちゃ☆秋菜だよー♪うぅっ…めっちゃ感動っ! 睡ちゃんおひさです! 秋菜だよっ☆ 本題へっ! 彼女記憶失うとか可哀想すぎっ! 睡ちゃん…うぅっ! 涙とまらんよぉー! すごいよー! 魔法?え? はい。 初めからとかこの男の人?悲しいよね…絶対…。 可哀想…。 秋菜だったらもう亡くなっていますね。 これからも自分のペースで頑張って♪ 応援してるっ☆ q(*・ω・*)pファイト! 次も楽しみにしてるね♪ 素敵なお話書いてくれてありがと♪ じゃ、ばいちゃ☆