弔い
左頬が熱くなる。 女子にグーで殴られたのは初めてだった。 目に涙を溜めてプルプルと震える理央。 途端に教室を飛び出して行った。 「……ってーな」 口の中が切れてしまった。 よろけながら立ち上がると、静稀が手を差し伸べてくる。 「そりゃあ、理央の1番の怒りのツボを押しちゃったからねぇ」 「そんなの知んねーし」 手を掴み、やっとの事で体の重心を整える。 すると晴稀が、ある提案を持ちかけてきた。 「図書室、行こうよ」 ◆◇◆◇ 「……こんなとこで何すんの」 「まあいいから」 静稀に窓辺の背の低い本棚に顎で促される。 俺は黙って本棚に腰掛けた。 風が心地良さそうに、静稀は目を閉じる。 「…お前さ、理央に何て言ったの」 「『男みたいな立ち振る舞いが気持ち悪い』って」 「うっわー、ド直球」 静稀は苦笑いする。 けれどすぐに真剣な顔になった。 「これからの話は、真面目に聞いて」 一息置くと、「長くなるかも」と前置きをして、話し始めた。 「僕と理央は幼馴染なんだ。 僕らは小さい頃から遊んでた。 僕、理央、そして理央のお兄さんの3人で。 どんな時も一緒だった。でも、事件が起きた。 理央のお兄さんが、死んだ。 事故だった。 歳も近かったし、理央は僕以上に現実を受け入れられなかったんだ。 理央は学校に行かず閉じこもる様になって、性格も陰気になっていって。 でも、いつもの様に僕が朝、学校へ誘いに行くと、理央が顔を出したんだ。 目の下は赤く腫れてたし、いたたまれない姿だったけど、強く、はっきりと僕に向かって言ったんだ。 『お兄ちゃんの分も、私が生きる。私、お兄ちゃんになる』って。 それから理央の一人称は『俺』になった。 休み時間は男子に混じって外遊び、服装もだんだん男の子っぽくなってきた。 でも、理央は女子である自分も大切にしてたよ。 流行りには敏感だし、女子の輪にも入っていく。 理央は男子からも女子からも、人気だった。 あんなにカリスマ性のある人間は、理央以外に知らないね」 そこまで言うと、晴稀はクスクスと笑った。 けどその目は何処か懐かしそうで、悲しそうに見えた。 「…理央の口調や素振りは確かに男の子だよ。 事情を知らない人は、それこそおかしいと思うはずさ。 でも、あれは理央なりのお兄さんへの弔いなんだ。 お兄さんは、理央と一心同体、同じずつ成長してるんだ。 …だからさ、理央に謝ってあげて欲しい」 俺は何も言えなかった。 転入してきたばっかで、慣れない学校とクラスメイト。 いきなりポニーテールの女子から「俺が学校案内してやるよ」って声をかけられたら、そりゃ指摘する。 でも、俺が間違ってた気がしてきた。 心は、ちゃんと女の子なのに。 傷つきやすいのに。 「…わかったよ」 静稀は半泣きで肩を組んでくる。 「転入生が『りょう』で良かったよ…!」 「ったく、いつも笑ってる静稀も、好きな奴の為になると熱くなるんだな」 「え、ちょっ、凌っ…」 2人で笑い合いながら図書室を後にする。 左頬は、まだ痛い。
みんなの答え
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文をかくのが上手ですね!
私は静稀さんに心をうばわれました!もし艮かったら、次の作品も見てみたいです!
良かった
最後の、『左頬は、まだ痛い。』が特に好きです。 他にも、物語の内容、構成、改行の位置とかがすごく上手で好みです。 このあと、理央ちゃんと凌くんが仲良くなれるといいなと思いました。
良き
言葉遣いが丁寧でした。
内容がしっかりしてる!
こんにちは。まるもっこです=(^.^)= この小説を読んだ時に内容が しっかりしているなと感じました。 話の内容が浅くなく深いんです。 登場人物の過去の内容が非常に深く 話の構成もしっかりしているので本を読んだみたいです! 登場人物の過去から何年か経った気持ちを 書くって想像しないとできないことだし、 それを書けるってすごいと思います! この人にこんな過去があったんだと 意外性をもたせてくれるのは読者にとって 面白い小説になりますし記憶に残ります! とても面白い小説でした。 長くなってすみません。 それでは!
『』
『りょう』っていうのはどんな意味なんだろう?と思いました。でも、理央は強い素敵な子だと思いました
ステキ
文章が上手い!