しょっぱい
「ごめん、お前とは付き合えない。」 それが、私の心を酷く傷付けた。 いや、別に酷くってわけでは無かった。ただ彼が「私が色々な男をたぶらかしている」という変な噂を信じていた事に対して、腹が立ったのだが、一周まわって呆れてしまった。 涙も引っ込んでしまった。 すごく目の前の被害者ぶってる男に平手打ちをかましたくなるのだが、あの噂が流されてるのも私が変なことをしたせいなのだと思い、それじゃ返って逆ギレの様になってしまうから、喉から手が出そうなほどの衝動を必死で抑えた。 「ほんと、ごめんね」、と目の前の男は引きつった笑いを浮かべる。 (やっぱムカついた。) 地面のコンクリートを蹴った。 _ 「ただいま~!」 と、玄関から少女の声が響く。僕は玄関まで様子を見に行くと、どこか疲れきった表情をしている彼女が立っていた。 彼女はローファーを脱ぐと、僕の手を繋いで洗面所へ手を洗いに行った。 洗面所で彼女は自分の顔を見ながら話し始める。 「聞いてよ~、今日さ、」 フラれちゃって、と彼女は辛いのか呆れてるのかよく分からない顔をして言った。 「でさ、その理由がさ、私のことについての変な噂のせいなの。」 全部でたらめなのにね、と彼女は悲しそうに笑った。この悲しい、という感情の起伏だけは明らかに感じた。 『大丈夫?』 と僕が聞くと、 「あー、やっぱ辛いかもしれない」 「我慢してたけど、」 彼女は、乾いた洗面台の前へしゃがみこんでしまった。水滴が落ちる。 そんな彼女を見ると、心がきゅっ、となるような、そんな息苦しさを覚えた。 『僕も悲しくなってきたな。』 僕が遠慮気味に笑うと、彼女はしゃがみこんだ姿勢から見える間から、少し笑顔でこう言った。 「ありがとうね、 ポチ。」 僕は、彼女の涙を舐めることしか出来ない。それも、犬だから。 『僕が犬じゃなかったら』 『そんな男、すぐ超えれたのに』 だれた尻尾も、全て、体が重かった。 _ 『』の犬のセリフを抜いても話が通じるように作りました。本来の『』の部分はワン、としか言ってないです。 タイトルのしょっぱい、はポチが感じた彼女の涙の味です。 いわさきは読んでからハッとするような小説をなるべく作るようにしてるので、意味がわからなかったらごめんなさい。
みんなの答え
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物語を知ると、タイトルを好きになる
いわさきさん、こんにちは。 設定も、台詞も、タイトルも、全部味わい深くて好きです…! 『僕が犬じゃなかったら』 『そんな男、すぐ越えれたのに』 男としての犬の思いが伝わってくる台詞ですね… [失恋]がテーマで少し重い感じだけど、「しょっぱい」っていうタイトルが、柔らかくてかわいい感じで良いなぁ……と思っていたら…! 「しょっぱい」という言葉にはちゃんと意味があったんですね…! 物語を読んで、タイトルをいっそう好きになりました! 本当に良かったです。ありがとうございました…!
おぉぉ!
しょっぱいってポチ目線だったんだ! 女の子かわいそうだな。噂のせいでふられるなんて。 とてもいい作品でした!