蜜柑風呂
蜜柑の皮を剥くと、アルベドと呼ばれる白い筋が、プチプチと千切れて気持ちの良い音を立てる。 さっきはアルベドを少しでも取ろうと思って、蜜柑を揉みすぎて薄皮が破れてしまったから、今回は失敗しないように。 口の中に放り込むと、ほんのりと甘い味がする。 蜜柑って不思議だ。 お腹が空いていない時、 明日が不安な時、 幸福感でいっぱいな時、いつ食べても美味しく感じる。 定番だけど、寒い夜に、炬燵に入ってTV番組を見ながら食べるのが一番すき。 蜜柑を食べると、気づけば、ほっと心が安らいでいる。 「そんなに食べると、手が黄色くなるぜ」 「うるさい」 お兄ちゃんが笑いながら言ってくる。 反抗期真っ最中の私は、いつものように冷たくそう言ったはずだったのに、なぜか柔らかい声になってしまった。 ああきっと、これも蜜柑のせいだ。 蜜柑には、何かこういう成分が入ってんのかな。 「もうそろそろ、年越しだね。」 「あっという間だったな、この一年間。感染症の恐ろしさを実感したよ」 お母さんとお父さんの、そんな会話が背後から聞こえた。 ってか、そろそろって言ってもあと一時間もあるじゃん。 そう言い返しそうになった。いつもならこんな会話聞いても、うるさいとしか感じなかったのにな。 もう今年が終わってしまうからだろうか。 それだけじゃない。やっぱり、蜜柑が関係している。絶対に。 「私、お風呂は入ってくる」 「あっ、その蜜柑の皮で、蜜柑風呂にしてみたら?」 お母さんが、キッチンに置いてあったネットを持ってきて、私の傍にあった、山のような蜜柑の皮を入れる。 ってか、一個のネットにそんなどっさりって、雑すぎでしょお母さんってば。 あれ、まただ。また蜜柑現象が起きた。 「わーった。それで入ってみる。」 正直なところ、蜜柑風呂は入ったことなかった。名前だけ聞いたことあるくらいだ。 躊躇しそうなところだけど、そうは感じないのは、きっとこれが今年最後のお風呂だからじゃなくて、 蜜柑のせいだ。
みんなの答え
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良いなあ
家族のあったかい感じが目に浮かびました、好き...! 蜜柑風呂入ってみたいなあ
好き好き好き!!!!
こういう系大好きです~
!
本文の2行の文に惹かれて見てみたけど… 普通に良い文章だと思います…! 頭にスーっと入って来る。 難しい漢字もそんなに使って無いし、何よりストーリーが良かった。 個人的にはこういう短編小説が好きです。
またほっこりきたぁ!
すきすぎ!!!今やみかん風呂はいります!!
信じられん
小説家になれますよこれ! ほっこりすぎる!!! (へえ、白い筋ってアルベドっていうんだ~)
ほっこり
今回も前回以上のほっこりで最高でした、ありがとうございました! また書いて~
追っかけのALです!
反抗期真っ只中の私としては共感してしまう小説だった! 大好き!最高!!!