今日の私弁当
私・高見凛(たかみりん)の朝は早い。 午前5時。いつも通りの時間に目が覚めた私は、畳の上に敷かれた布団から体を起こし伸びをする。 大きな欠伸をしながら布団を畳んでいると、玄関口から物音が聞こえてきた。それに続き、間延びした女性の声が聞こえてくる。 「ただいま~。凛~もう起きてる~?」 私は布団を押入れにしまいながら、 「お帰りなさい、お母さん」 と、返事をした。だが、母から返事が帰ってくることはなく、バタリと倒れる音が聞こえるのみ。 ため息をつきながら玄関を覗くと、案の定母が靴を片方履いたまま眠っている。 「またか……」 もう一度大きなため息をついてそう呟くと、私は母の靴を脱がせ、先程の部屋まで引きずっていった。 私の家には父親がいない。私がまだ物心つくよりも前に、病死したらしい。顔も、声も、性格も知らない父が病死したという事実は、私自身実感を持つことができなかった。 父親がいない。それ故に母は仕事に精を出し、今日も夜勤から帰ってきたというわけだ。 「さ、弁当作るか……」 独りごちながら腕捲りをし、台所へと足を向ける。冷蔵庫の野菜室を開けてみると、今日も見事に空っぽだ。 「トマトとキャベツ、昨日使っちゃったっけ?」 野菜室を閉めて冷蔵室を開ける。覗くと、中には残りわずかな牛乳一本と、昨日の夜にスーパーで購入したウインナーと卵。どちらも半額だ。その他に、辛うじてケチャップがあるのだが……。 冷蔵庫からウインナー、卵、ケチャップを取り出し、足元の段ボールから玉ねぎを取る。昨日の夜に炊いておいたご飯を焦げたフライパンに入れ、ケチャップをグルリとかけた。 「包丁はっと……」 左手に持ったヘラでフライパンをかき混ぜながら右手でまな板と包丁を出し、トントントンと玉ねぎを刻んでいく。ヘラを置いてフライパンを左右に揺らしている間に、玉ねぎをみじん切りにし、ウインナーを輪切りにした。 まな板にのった玉ねぎとウインナーをフライパンに流し、もう一度ヘラで混ぜた。玉ねぎがあめ色に変わると火を止め、弁当箱へと移し替える。 続いて、卵をフライパンに割り入れた。カチャカチャと箸で卵をかき混ぜる。卵を薄く伸ばして形を整えると、後は弁当箱にかけるだけだ。 最後に、上からケチャップで文字を書けば……。 「よし、完成」 フンスゥ、と得意気に鼻から息を吐く。 完成した私のオムライスをテーブルに置き、心のカメラでパシャリ。 今日の私弁当は『幸せ』のオムライスだ。
みんなの答え
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作家になれるよ
正直一瞬大人の人の作品かと思いました。表現も上手ですね!作家になれると思いますよ
ポカポカする
心がポカポカする小説でした。 自分でご飯を作ることができる凛ちゃんも凄いし、 それを描写できるユカリさんも凄いです! 『心のカメラ』っていう表現がとても好きです。 本物のカメラで撮るのではなく、自分でちゃんと覚えておこうとしている感じがしました。 『幸せ』というのもすごく良かったです。
無題
めっちゃすごいじゃん。 同い年なのに、こんなすごい短編小説が書ける人の文章って 初めて読んだわ。