短編小説みんなの答え:1

新聞配達とホルン

 私は新聞配達をしている中学三年生。今は12月、クリスマスまであと2週間くらいという所。だけど私にクリスマスを待ち侘びている暇は無かった。なぜなら家には母しかいなくて、しかも最近重い病気にかかった。そして私には高校受験が迫っている。だからその受験代と母の薬代を稼ぐために、中学生でもできる数少ない仕事、新聞配達で金を稼いで生きている。今日も朝早くに起きて母のためのご飯を炊き、制服を身に纏い、新聞配達をしに行く。  白い息が出る。すっかり冬になったな、とは思っていたけど、配達用の新聞をちらっと見ると、来週くらいには雪が降るようだ。大量の新聞を担ぎながら自転車を漕ぐ。高橋さん、一ノ瀬さん、三宅さん、いつもの人に新聞を配り、次の人は…と新聞に目を通す。次は…白石さん…?最近新聞取り始めたのかな、とまた自転車を走らせる。  着いたのは小さな川のすぐそこの家。普通の人から見たら普通の家。だけど私から見ると、とても大きくて私には手が届かない様な一軒家。とりあえず、ポストに新聞を入れた。そして、今日の新聞配達は終わった。空に向かって白い息を吐いた。すると、白石さんの家から白い息のようにふわっとした音色が聞こえた。この音…ホルンかな…?私のお母さんはつい最近まで私の学校の吹奏楽部の顧問をしていて、ホルンを吹いていた。その音色はお母さんにそっくり…とは言えないけど、一生懸命な感じがした。私はもう一度白い息を吐いた。その息は音と共鳴する様に広がった。その音を聴いている間にもう学校に行かないといけない時間になったので、焦りながら自転車を走らせた。  学校から帰るとお母さんが味噌汁を作って待っていた。「ただいま」「おかえり」と言葉を交わした。そしていつもの味噌汁を飲み干した。いつもの味だった。  次の日も新聞配達に行った。西田さん、鈴木さん、榎本さん、そして白石さん。白石さんの家からは、今日もホルンの音が聞こえた。ホルンの低くも高くもないような音、ふわっとした響き。その音にどんどん虜になっていった。  次の日もその次の日も新聞配達のついでに白石さんのホルンを聞きにいった。家の前でずっと立ち尽くしていると、いきなり音が止まった。そして3分くらい次の音が鳴るのを待つと、ドアから女の人が出てきた。制服からしてすぐそこの高校の人だ。今時の女子高生のようなリュックにホルンケースを持っている。って、もしかして… 「あなたがいつも朝聞こえるホルンを吹いてる…」「そう。白石優樹菜。新聞配達ありがと。じゃーねー。」 それだけ言って白石さん…いや、優樹菜さんは高校の方に歩いていった。優樹菜さんはボブカット、そしてバレない程度に折られたミニスカート、これもまた最近の女子高生って感じがした。歩いていく優樹菜さんを見送って、私は歩いていった。昨日より白い息の白が濃くなっていた。  家に帰ると母がホルンを抱えていた。一つの手紙を持ちながら。「おかえり、薬買ってきたよ。」とだけ言ってリュックを下ろした。「ねぇお母さん、その手紙って誰から?」「えっとね、白石優樹菜さん。まぁ言ってもわからないだろうけど。」「…知ってる。新聞配達で知り合った」と言うと、お母さんは驚いていた。  お母さんはこう言った。優樹菜さんは音大を目指している。そして、中学生の時、優樹菜さんはお母さんが顧問の先生として働いていた時に吹奏楽部にいたんだとか。そしてその手紙はもうすぐ受験があって、もう一度会いたい。だけどお母さんはもう歩けない。だから無理して来なくてもいいよ、と言う趣旨だったそう。お母さんは泣いた。初めて見た。じゃあ…私は…「明日、ちょうど休日だし、お母さんを優樹菜さんの家に連れていってあげる。」  次の日、お母さん、起きて。と起こして、新聞、後ろにお母さん、ホルンケースを担ぎ、優樹菜さんの家に行った。 いくともうホルンの音が聞こえる。「優樹菜ちゃん、すごく上手くなった…」もう言うことはないよ、帰ろうとお母さんは言った。まだ何もしていないのに…と言うと、お母さんは手紙を書いて、新聞に挟んだ。二人で小さく微笑むと、雪が降ってきた。初雪だ。雪は街を白に染めていった。  それから少し時間は経ち、私は高校受験に受かった。そして優樹菜さんも音大に受かったと聞いた。新聞配達のついでに話を聞いた。その話を聞いて、私もホルンやる!と帰ると、お母さんは満足げな顔で倒れていた。  お母さんの頭を撫で、ホルンを持った。息を入れたが出ない。やっと出た音もお母さんの音にはまだ遠い。けど、私は上手くなる。あの時お母さんが奏でた音と同じくらい、それ以上に上手くなる。

みんなの答え

辛口の答え

※きびしいコメントを見たくない人は
「見ない」をおすと表示されなくなるよ!

凄すぎワロタ

やばい感動した すごいよー


11を表示

他の相談も見る

ランキングページへ

相談に答える

相談の答えを書くときのルール

【「相談する」「相談に答える(回答する)」ときのルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
ニックネーム必須

※3〜20文字で入力してね

※フルネーム(名字・名前の両方)が書かれた投稿は紹介できません


せいべつ必須

ねんれい必須
さい

※投稿できるのは5〜19さいです


都道府県必須

アイコン必須

答えのタイトル必須

※30文字以内


じこしょうかいじゆう

※書かなくてもいいよ

※140文字以内

※自分の本当の名前、住所などの個人情報(こじんじょうほう)は書かないでね


ないよう必須

※500文字以内


辛口

※ないようがきびしいコメントの場合はチェックをつけてね!


ひみつのあいことばを設定してね

他の人にわからないように、自分しか知らないしつもんと答えを入力してね。

※ひみつのあいことばは忘れないようにしてください
「キズなんマイプロフカード」を使うとカードとしてスマホなどに保存(ほぞん)できるよ

※自分が選んだしつもんや答えが他の人に見えることはありません

ひみつのあいことばってなに?
なんのために設定(せってい)するの?

【ひみつのあいことばってなに?】

じぶんコードを作るための仕組みだよ。

じぶんコードは、「ニックネーム」と「ひみつのあいことば」から作られます。

【じぶんコードってなに?】

投稿(とうこう)が公開されたときに、ニックネームの後ろにつく英数字(記号ふくむ)の自分専用(せんよう)のマークです。

ニックネームの後ろにじぶんコードが表示されている例

【なんのために設定(せってい)するの?】

「ひみつのあいことば」によって、「なりすまし」をふせぐことができます

「じぶんコード」は、あなた自身が入力した「ニックネーム」と「ひみつのあいことば」から作られます。

それにより、同じニックネームだったとしても、それぞれの「じぶんコード」が表示されるので、別々の人であることがわかります。

ひみつのあいことば①必須

※使える文字: ひらがな・カタカナ・半角英数字

※半角カタカナ、全角英数字が使えないよ

※2〜20文字で入力してね

ひみつのあいことば②必須

※使える文字: ひらがな・カタカナ・半角英数字

※半角カタカナ、全角英数字が使えないよ

※2〜20文字で入力してね

※みんなで使うスマホ・パソコンではチェックしないでね

※毎日キズなんに来ていると、ずっと自動で入力されるよ。くわしくはコチラ