無題の悩み
彼は、私が叩くハイハットの開く音が耳障りだと、耳を抑えてよく言っていた。 部活から帰って、携帯のパスワードを開けて、トークアプリを開く。開いて1番上に彼の名前があって、連絡が着いていた。 新しいベースを買った、という報告といかにも新品です、というようなピカピカのベースの写真が送られてきた。 私達は、吹奏楽部に属していて、私はその中でパーカス、打楽器に所属している。一方彼は、大体の楽器は出来るようで、一応所属はサックスらしい。 ベースなんて、バンドがあってこそ成り立つものじゃないのかな、と思って返信しようとしたけど、彼がまた変に怒ったら怖いのでやめて置いた。 彼と私を繋ぐものは、お互い「音楽」である。中学校が始まってから出会って、吹奏楽部に入って出会った。全ての繋ぎ目は、「音楽」である。 だから私は、彼と私とで作り出す、「音楽」が大好きだ。 今思ったけど、ベースとドラムってバンドっぽいなぁ、と思って返信してみる。 すると、彼は、 「1回バンドやってみるか?」 と予想しなかった返信を送ってきた。 私は、普通に、素直に、 彼が出世したら、私の姿もバレちゃうんじゃないの?と思って、その誘いを画面の上で笑って、断っておいた。 _ それから10年後ほど。 彼は、出世していた。 知らない人なんて、いないほどに彼は人気になっていた。そんな時も彼は、あの時のベースを持っていた。変わらず新品のように光っていた。 私は自分の子供を抱えて、彼の出世した姿を見ていると、あの時の恋心を思い出す。甘酸っぱくて、まだ恋だとは気付いていなかった時の、あの恋愛を。 子供には、彼と友達だった事を話していない。夫にもだが。 テレビで笑う彼は、口を開けてこう言っていた。 「私が今ここにいるのは、「音楽」が僕の中であり続けるからです。」 と長々と語っていた。 当時の私と彼との繋ぎ目は、「音楽」だったのを思い出した。 そうか、彼にとっての音楽は、「将来の夢を叶える」ための物だったのか。 でも、確かにあの時の恋心は、両思いだったのかな、と思う。お互いに目が合ったり、そしたら照れたり、学生の脳では、両思いだとしか思えないような、そんな思い出だったのだ。 価値観が合わなかったのかな と、心が子供なままに思う。 彼の光ったベースとは裏腹に、私のドラムは、黄ばんでいた。 _ いわさきはサックスもドラムも出来ます。クラリネットとピアノも出来ます。 いわさきが昔好きだった人は、サックスをやっていました。彼も大人になったらこんなになるのかなぁと思って書いてました。そこからがこの小説の始まりでした。
みんなの答え
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音楽…!
『画面の上で笑って』という表現が好きです。 少し切なさの残るお話でとてもいいと思います。 最後の対比のような一文も工夫されていてすごいです! この小説のきっかけがすごく良いなぁと思いました。 また、自分はピアノを少しかじっている程度なので楽器がたくさんできるのって憧れます……!