短編小説みんなの答え:1

三百年後の再会

もうすぐ私、死ぬんだなと少女は思った。 夜空に仲間を少女は見た。聡子(さとこ)、来ないで。聡子さん、来ちゃ駄目。聡子ちゃん、生きてよ。聡子、あいつを倒せ。聡子、まだ十四歳でしょ、こちらに来るのが早いわ。 幾ら来ないでって言われても心臓が止まるのは止められないから。 少女に目鼻立ちが似ている少年が少女の名を絶叫した。少女に駆け寄り、 「死ぬな、死ぬな。俺から聡子まで奪うなよ。神様、仏様、聡子を死なせないでくれ、俺から全てを奪わないでくれ」 と泣いた。 触手を振り回す男。男の触手が鳩尾に刺さった少女は少年を落ち着かせるように微笑んだ。 少女達より年上の男が少年の背をさすった。 少女の瞳から涙がこぼれ落ちた。仰向けの状態だったため、目尻から涙が土に落ちた。その瞬間、少女の息が止まった。 妙にリアルな夢だった。 夢に出てきた人たちの会話、衣服からして舞台は江戸時代中期だと思う。 人や触手、武器の輪郭がはっきりしていて言葉もはっきりと聞こえた。今まで見た夢とは違う。 不思議な事にどこかで経験したことがあったように思える。 映画やテレビドラマ、小説や漫画、アニメで同じようなシーンがあったのだろうか。 私は双子の兄の綾斗(あやと)にお弁当を食べながら訊ねた。 「ねえ、綾斗。私、触手が出る話って観たことあったっけ?」 綾斗が不思議な事にビクッと身を竦ませた。 「どうしたの?綾斗」 綾斗は首を振った。 「観た事ないと思うよ。刹那(せつな)が観たり読んだりしたもので、触手が登場するものは無かっただろ」 「妙にリアルな夢を見て。その夢に綾斗と似た容姿の人が出てきて聡子っていう死んじゃった子にすがりついてたの。私は聡子ちゃん視点でその夢を見てたんだけど。どこかで経験したような気がしたからさ」 綾斗は笑った。それが作り笑いであることは私にはすぐに分かった。 綾斗と中庭で別れて教室に向かっていると歴史教師の野(ひばりの)先生に声を掛けられた。 「香炉(こうろ)。これを教室に運んでおいてくれないか?」 野先生は良くも悪くも私の印象に残っている。私を見て聡子と呟きながら泣き、歴史の授業は面白く、よく生徒達に劇をやらせる。明朗快活で授業も分かりやすく、記憶に残るような授業だからみんなから慕われている。私が知る中で歴史が苦手な生徒はいない。 もちろん、私も歴史は得意だ。もともと歴史が好きだったから本やテレビ番組を読んでいたから小学校の時も歴史は得意だった。先生の授業のおかげでさらにテストの点数が良くなった。 そう言えば、夢の女の子の名前も聡子だった。 私は先生が持っている段ボールを両手に抱え 「あの、先生、聡子さんってお知り合いですか?」 先生は驚いたように目を見開き、悲しそうに目を伏せた。 「あの、すみません、忘れてください」 聞いちゃいけないことだと直感した。 「知りたいのか?それを知ることで自分が悲しんでも」 主語は言われていないけど、私に伝わった。 「いえ」 私はそう言うと、段ボールを床に下ろし、お弁当を包んだ風呂敷を上において、再び段ボールを両腕に抱え教室を目指した。 絶対に何かある。 綾斗も野先生も私が見た夢と何か関係があるんだ。 あの聡子さんも。あの男の子も。あの男の人も。 「きゃぁぁ!」 耳をつんざくような悲鳴が上がった。 私から五十メートルくらい離れたところに人だかりができていた。 無意識に体が動いていた。私は悲鳴が上がった方向に走っていた。 人混みを掻き分け掻き分け進むと女の人が血を流していて、その横に刃物を持った男が立っていた。周りの人を威嚇するように包丁を見せびらかしている。 その光景を見た私の脳に私ではない記憶が入ってきた。目の前で殺された両親。自分たちを助けてくれた女から聞かされた化け物の存在。化け物の王との戦い。あの長い夢は聡子さんの記憶だったのだ。多分、私の前世の。前世なんて信じてなかったけど。 私は商店街の幟のポールを持つと、男に立ち向かった。遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。 聡子さんが習っていた剣術の流派で一瞬で男を気絶させた。 戦うから聡子さんは実戦向けの剣術を習っていたようだ。 私は昨日の件で新聞に載った。 綾斗といた私に野先生が 「香炉、これを教室に持って行ってくれ」 私は頷いた。 「分かりました、今枝(いまえだ)さん。私、思い出した事、後悔していませんし悲しくなんかありません。後悔もしていない、悲しくもない理由は分かりませんけど。 あの時の仲間はこの学校に何人もいたんですね。綾斗は今も昔もの双子の兄だったんですね」 綾斗と先生が目を見開いた。それから、嬉しそうに微笑んだ。

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こんにちは、こんばんは、コクト一です! 歴史ファンタジ一だ!感動しました 私は、こういうお話が好きなので、ワクワクしながら読みました! いいお話ありがとうございます、次回作も応えんしてま一す(O^V^O)


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