短編小説みんなの答え:1

花咲

クリーム色の空気が、私の髪の毛に触れる。いつもより、柔らかく感じる春の大気は、私の想いと一緒に、進んで行った。 彼は、よく私と一緒にこの土手へ出かけた。新品の自転車を漕がせて、たまには歩いたり、彼の免許を持った車に乗ったり。見る風景と共に、彼の顔もまた違かったな、と今では感じる。 いつもこの場所へ来ると、私の今座っているこのコンクリートに座って、2人で、沢山駄弁った。好きな季節、好きな曲。彼は、私が求めている話を躊躇無く、すぐに話してくれていた。付き合い始めて、その話を聞いていく内に、この人は、嘘をつかない人なんだな、と勝手に思っていた。 蜜の匂いが隣から漂う。 狭いコンクリートの間にひっそりと佇んでいたのは、コスモスだった。指先で花弁に触れると、ふわっとした感覚が指先を包んだ。その感覚が、暖かく気持ち良く、掌(てのひら)で包んだ。自分の冷え性な肌が、雪解けのように暖まるのを感じる。しばらく、その感覚に浸っていると、花弁が1枚、はらりと落ちた。その花弁は、丁度よく来た風に攫われた。 それを見て、色んな思いが募った。 1枚、欠けた花を見つめる。私の、彼を失った心情をそのまま体現してるように感じる。それを感じる自分にも呆れてしまって、自分を鼻で笑ってしまった。 自分が、すごく惨めだとも、感じた。 目頭が熱い。鼻先に、目から垂れた水が滴った。すっかり空気は冷えていて、空はもう、深海のような青になっていた。 掌も、すっかり冷えてしまった。そんな自分を温めてくれる存在を思い出した。もう、その人は、離れてしまった。 コスモスの花弁が、また1枚落ちた。 花占い、という言葉が、頭に過った。 コスモスの花弁を、自分の手で1枚剥がしてみる。指先でつまんだ花弁は、風に吹かれて、上へ昇ってしまった。自分の髪の毛が、風に吹かれて、少し冷たくなっているのを、肌で感じた。 さっき、ちぎったのは「好き」の花びらだった。次ちぎるのは、「嫌い」だ。 こんなことしてる自分が虚しい。 叶わない思いを抱えている自分が、虚しい。その思いのやり場は、もう居ないことはわかっている。でも、答えを出すやり方が、これしか無かった。花びらが、無くなっていく様子に、自分の期待も少なくなってしまったりした。枚数を数えれば、答えが手に取るようにわかってしまうからだ、なのに、このやり方を取ってしまう自分に、嫌悪を覚えた。 自分の涙が、波のように揺れた。 震える指先で、「嫌い」をちぎった。 花弁は、残り2枚。 _ いわさきです。 恋愛って願い事が増える度に悲しくなるっていう話です。

みんなの答え

辛口の答え

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表現が好きです

『花弁は、残り2枚。』という終わり方が綺麗だと思いました。 答えは言わないでいるけど、でも考えればそれに思い当たってしまう、切ない感じ。 切ないけど、それがこの小説の良いところなのかもな、と感じます。 とても好きなお話でした。 あとがきの、恋愛って、というのも共感です。


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