短編小説みんなの答え:2

連綿

窓の外は、まだ薄暗い。 随分日が長くなったとはいえ、早朝の時間帯には、まだ寒さの名残があった。 眠気を振り払うように、ゆっくりと瞬きをする。腰にしっかりと巻き付いているのは、筋肉質な腕。まだ夢の中にいる彼の黒髪を、起こさないように優しく撫でた。 今のこの姿からは想像もつかないが、彼にはひどく弱っていた時期がある。 特に顕著だったのは、悪夢。毎晩毎晩魘されては飛び起きていたせいで、まともな睡眠を取れずにいたのだ。 彼の心に棲みついてしまった、惨たらしい争いの記憶。それはいつまでも、彼の安眠を蝕み続けていた。 鍛え上げられた身体は、薪を割り、井戸の水を汲み上げる為にある。 その手に握ったナイフは、熱々のパンにバターを塗る為に。 壁に立てかけられているのはライフルではなく、家具を作る為の金槌とノコギリだ。 人は、時と共に変わる。 心に根付いた苦痛も、恐怖も、悲しみも。時を経れば、薄く白く晒され始める。 彼だってそうだ。朝まで目覚めずに眠れるようになった。疎かにしていた食事だって、きちんと摂るようになった。 彼が人を殺める事は、二度とない。 誰かから奪うことも、奪われることも、決してありはしないだろう。 彼にそれを強いる者は、もうどこにもいないのだから。 さあ、朝食の支度をしよう。 顔を洗って、服を着替えて、二人で焼きたてのパンを齧りながら、今日の予定を考えるのだ。 この山奥の小さな家に、兵士はいない。 大砲の轟音も響かない。 誰かの悲鳴だって、もう聞こえてはこないのだから。 変わらない日々が、続いていく。 平凡で退屈で、それでも暖かく、穏やかな毎日が。 明日も明後日も。これから何十年先まで、変わらずに。

みんなの答え

辛口の答え

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うおお、

語彙力パネェっすわ、シンプルに好きです。戦後の男女の日常が美しく繊細に描かれていて、なにかくるものがありました。素晴らしいお話をありがとうございます!


流石の語彙力です

恐らく戦争体験者の御夫婦のお話でしょうか。旦那さんは兵隊さんとして戦いに出て人を殺していたのかな……そして奥さんは今旦那さんが誰も殺さずに済んでいることに安心し、平和が続くように祈ってるんですね。最初はどんな話か掴めませんでしたが、読み進めると文字から背景や登場人物の様子など感じ取ることが出来ました!素敵な作品をありがとうございます!


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