宝石の涙──もう一度、君に会いたくて。──
「雫、私がいなくなったら、どうする?」 真夜中の誰もいなくなった教室で、美羽が私に聞いた、その言葉。優しく微笑む、その顔。 ──ある記憶を呼び起こした。 「お姉ちゃんは、いつ家に帰ってくるの?どうしてずっとベッドにいるの?ねえ、なんで?」 羽沢病院のベッドで、点滴だらけの姉の顔を見ながら、まだ五歳くらいの私は問いかける。 お姉ちゃんはふっと優しく笑い、私の頭をなでる。そして、少し悲し気な顔をして、こう言った。 「ねえ、雫。お姉ちゃんがいなくなったら、どうする?」 「そりゃ、悲し・・・」 悲しいよ、と言いかけたが、次の瞬間、病室のドアがバアン!とあき、親友の恵茉が入ってきた。看護師さんが、困り顔で、シー。静かに。といったのが聞こえた。 「ねえ、雫っ!面白いもの見つけた!来なよ」 私は興味をひかれ、また来るね。とお姉ちゃんに手をふった。 けれど、寸でのところでお姉ちゃんに呼び止められた。 「これ。大事に取っておいてね。手作りだよ」 お姉ちゃんの手のひらには、可愛いリボンのバレッタがのっていた。私は目を輝かせて何度もありがとう、と言った。 「じゃ、また明日!これ大事にするね!」私はそう言い、恵茉と一緒に病室をかけ出た。 もう一度振り返った私は、驚きのものを見た。 お姉ちゃんが静かに涙を流して泣いていた。私が見ていたことに気が付くと、涙をふくことも忘れ、にっこりと笑った。 ──その笑顔が、私に見せた最期の笑顔だった。 なぜか美羽の体がどんどん消えていく。なのに美羽は、寂しそうな、悲しそうな微笑みを浮かべていた。 私は驚きなど忘れ、あせって「なんで!なんで消えるの!嫌だ!」と、叫んだ。 「私、雫にもう一度会えて、幸せだったよ。」 美羽がそんなことを言い、微笑んだ。──目頭に涙があふれている。 「わあああ!消えないで!待って!」 私の目にも涙があふれて止まらない。 もう美羽の下半身が消えている。 私は全力で走り、残っている上半身に抱き着いた。 美羽がやさしくよしよしと私の頭をなでる。 「待って!行かないで、、」 気が付くと美羽は消えていた。 そうだ、みう、うみ、海──死んだ姉の名前だ。それでも、また会いに来てくれた。 「ありがとう────お姉ちゃん」 ──海辺まで行くと、残っていた涙の雫が海に落ち、混ざりあった。 降り注ぐ朝日の中、私はリボンのバレッタを胸にあて、微笑んだ。
みんなの答え
※きびしいコメントを見たくない人は
「見ない」をおすと表示されなくなるよ!
カンドーした!
カンドーしたゼ!!兄弟愛の大切さを見直させられた!ありがとうございます!