最初で最後の恋人はもういない
『好きです、付き合ってください』 「…ごめん、好きな人、いるんだ。」 私は、いつになればあなたと離れることができるのだろう。 私には恋人がいた。 あまり学校に行けなくて、久々に登校した日。 唯一話しかけてくれたのが、あなただった。 この前転校してきたばっかなんだ、よろしくね! なんて、笑顔でこちらを見つめるから。 私は、最初で最後の恋をした。 あなたはよく一緒にお弁当を食べてくれた。 移動教室の時、いつも一緒に移動した。 帰路が全く違うのに、いつも私の家の近くまで一緒に歩いてくれた。 私はクラスで浮かれている。 よく私がミスをすると、みんな私に目を向け、クスクス笑う。 それでも、あなたは私とずっと一緒にいてくれた。 そんなあなたに、私はずっと恋をしていたの。 「…好きです」 『……え?』 「…あなたが、好き」 「だから、付き合って欲しい」 「…っ、ごめんね、気持ち悪いよね、こんなの」 『…いいよ、』 『付き合お。』 「…ほんと?」 『うん、ほんと。』 あなたの誕生日に私は生まれて初めて告白して、恋人ができた。 それからは私の人生が大きく変わったんだ。 一緒に手を繋いで帰って、一緒にお揃いのキーホルダーを買って、時間があればいつも電話をしていた。 毎日が幸せだった。 あなたと出会えて良かったって心から思ったの。 「…好きだよ」 『どうしたの急に』 「言いたくなったんだ。」 『そっか。』 『じゃ、もう今日は寝るね。』 「…うん、おやすみ。」 その言葉を最後に、電話を切る。 明日は、あなたの好きなポニーテールにするね。 次の日。 心做しか、あなたが少し体調が悪そうに見えたの。 大丈夫? って聞いても、 全然大丈夫! 気にしないで。 なんて言うから。 その日のあなたのお弁当は、少なかった。 それだけで足りるの? 全然足りる! 最近ダイエットしてるんだ!! そういえば、最近帰りにコンビニでアイス買ってこ! なんて言われなくなった。 私、意外と楽しくて好きだったんだよ。 放課後。 先生に呼ばれてるから、先に帰ってていいよ。 いいよ、全然待つよ。 …ごめん、本当に先に帰って欲しい。 …分かった。 そう言われて、渋々1人で帰ることにした。 最後に1人で帰ったのは、いつぶりだろう。 ずっとあなたと一緒に帰っていたから、覚えてないや。 ふと校舎を振り返る。 屋上に、誰かがいる。 「…まって、うそ」 フェンスを越えて立っていたのは、あなただった。 急いで校舎に戻り、屋上まで全力で階段を登る。 お願い、間に合って。 今までにない速さで屋上に着き、大きな音を立てながらドアを開ける。 びっくりしてこちらを振り向いたあなたは、顔が真っ青で、冷や汗が大量に出ていた。 「…何してるの?」 『…見ればわかるでしょ』 「…、うん、わかる。 早くこっち来て。 一緒に帰ろう? 悩みなんていくらでも聞くからさ。」 そう言っても一向にこっちに来ないあなたに、私は動揺を隠せない。 心臓の音が耳に響く。 『…いじめられてたんだ。』 「……え、?」 『やっぱり、“私たち”、付き合うべきじゃなかった。』 『女の子同士が付き合うなんて、ってたくさん言われた。』 『私、あなたが幸せならなんでもいいと思ってた。 もちろん私もあなたのこと大好き。』 『…でも、もう耐えられないや。』 ごめんね、大好き。 雲ひとつない青空の下、私は静かに涙を零した。