苦めのコーヒー
授業をする先生の声は、右から左へと流れていく。 ちらりと視線を左隣のアイツに向ける。一番後ろ、窓際の席。 …こんなに横顔、綺麗だっけ。 窓の外を眺める彼のことが、どうやら私は好きだったらしい。 「おい」 「…んぇ、っ」 っ、しまった。間抜けすぎる声が出た… 「え、何その反応笑」 「うっさいな、そっちこそ何?」 「いや、めっちゃ視線感じたから」 「…っ、ばーか、外見てただけだから!」 ホントは外を見てるあんたを見てた、なんて言う勇気は私には無いみたい。 幼馴染だってのに、なーんか遠い。 「…あ、」 「よっ」 会ってしまった。しかも部活終わり、2人きり。 バスケのバッシュを持っていて、練習着姿で、不覚にもドキッとした。 「今部活終わったとこ?」 「おう、香耶もだろ?」 「うん」 「疲れたなー」 「ホントそれ。暑いったらない」 「よし、そんな君にプレゼントをあげよう!!」 「え、何?笑」 次の瞬間、ピトッと頬に缶がくっつく感触がした。 「うわ、冷た」 「んな冷たくねえよ、ただの缶コーヒー。特別にやるわ」 「え、何?アンタにしては珍しいじゃん」 「ディスんな!笑」 冗談に笑ってくれる彼が、やっぱり好きみたい。 「…あのさ、一緒に帰る…?」 だから勇気を出して誘ってみた、はいいけど。 「…あー、ちょっと今日は…」 「え…」 まさかの濁り切った返事に固まっていると、「廉!」と叫びながら走ってくる女の子が。 …あ、そういう…ことか。 「ごめん香耶、また明日な」 「…うん、これありがと!」 「次はお前が奢れよ?」 「廉が私よりテスト良かったらいーよ?」 「はあ!?あーもう、絶対勝つから!」 ムキになっている廉の隣で、不思議そうに私を見つめる女の子。 「…じゃ、また」 廉に手を振って、女の子にお辞儀して、学校からひたすら走った。 途中でコーヒー缶を握りしめて走っていたことに気付く。 「…苦っ、ブラックじゃん」 私の心を吸い取っているかのような苦さだった。 …さよなら、私の恋。