2本のトロンボーン
「行ってくるね、奏花(そうか)」 俺、奏太(かなた)の幼馴染の奏花が中3の秋に病気で亡くなってから、もうすぐ3年がたつ。 9年前、半ば強引に奏花に連れていかれた金管バンドの見学。最初は興味がなかった。でも、演奏を見た瞬間何かで打ち抜かれた気がした。初めて見た、トロンボーンという楽器に。それは、奏花も同じだった。だから2人でずっと一緒に吹いていよう、と約束した。なのに、それは叶わなかった。 中学最後の大会の直後、病気で倒れた奏花は1ヶ月あまりで亡くなってしまった。最後に奏花はこう言った。 「奏太のトロンボーンの音なら、どこまでも聴こえるよね。 なら、ずっと奏太の音をずっと聞いてられるね。でも、来世は聴いてるだけじゃなくて、一緒に吹こうね。またね。」と。 なら、俺より何倍も上手い奏花に並べるように練習しとかなきゃな。そう思って3年間練習して来た。 そして今日は、2人で目標にしてきた吹奏楽コンクール全国大会当日。でも、緊張はしていない。隣に奏花の面影があるから。奏花の音が聞こえるから。 結果は、銀賞だった。次は、金賞を。現世に次はないけれど。 「行くぞー、奏香。」 「今行く。頑張ろうね奏汰。初の全国大会!」 「おう。絶対金賞な。」 君は、これが俺にとって2度目の全国大会だということを知らないだろうけど。 今世は、1つの写真に同じ楽器を持って、金賞の賞状とトロフィーを満面の笑みで見つめる奏香がいた。 「頑張ったな。ありがとう奏花。」