ありがとう、もし私が男であれば――
「好きです!!!」 私は叫んだ。声が道路の方まで響いた気がした。 とある中学校に通う、普通の女の子の私、皆森鈴(みなもりすず)。 私は、部活の先輩でもあり、塾の先輩でもある、 山茶花井祐(さざんかいゆ)への告白の真っ最中なのであります。 「私、井祐先輩にずっと憧れてました!!! 勉強も運動もできて、バレー部ではいつも優しく指導してくれて・・・・!!!!」 私はできるだけ気持ちが伝わるように、必死で叫んだ。 井祐先輩はしばらく黙って私を見つめていたが、やがて言った。 「鈴ちゃんには、言ってなかったね」 井祐先輩は寂しそうに笑い、その先を続けた。 「僕・・・・私は、女なのよ」 ――え? 驚きで声を出せず、代わりに心の中で上ずった声を出した。 「私は女なの。両親に男として育てられたけど、女なのよ。 せっかく告白してくれたのに、・・・ごめんね。女なのよ・・・」 井祐先輩は「女なのよ」を繰り返した。 それ以外にかけられる言葉がないことを分かっていたのだろう。 「井祐、先輩。ごめんなさい・・・・・・・」 私は泣いた。 女の人に告白なんてしてしまった自分が情けなかった。 きっと、井祐先輩は、女として育ててほしかっただろうに。 男ではないのだから。 ご両親の事情は分からないけど、きっと、井祐先輩はいやだったのだろう。 私が号泣していると、また声がした。 「ありがとう。もし私が男であれば、きっとYESって言えたのに。 もし男であれば、きっとあなたを彼女にする・・・、妻にする、よ」 井祐先輩まで泣いた。 私ももっと泣いた。 風が吹いた。 井祐先輩の手を握って、私はひたすら泣いた。 「井祐先輩」 私は途切れ途切れ、言った。 「・・・なあに?」 「私――」 私は、力を込めて声を出した。 「友達として、先輩として、井祐先輩が大好きです!」