未来への希望をキミに託して。【短編小説】
私は生まれつき体が弱い。そんな自分が、大嫌いだ。 私、川村リリカは幼少期、ずっと入院していた。両親はそんな私を放り出してどこかに行ってしまった。今は施設暮らし。両親が出て行って一か月くらいは戻ってくると信じて願っていたものだが、今はそんな希望はどこにもない。学校なんて行けずにずっと入院していたから、基礎学力をこの施設で高めている。もう私は長くない。あと半年も持てばいいところだろう。私は別に両親を恨んだりしない。恨むのは、自分の弱くて頼りない体だ。人を嫌ったことはほとんどないが、自分だけはずっと嫌っている。そんな自分も大嫌いだ。 ある日施設に見知らぬ人がきた。いつものことだと思い、何もせずにボーっとしていると、 「君、川村リリカさん?」 なぜ私の名前を知っているのだろう?私の名前なんて両親と施設の人くらいしか知らないはずなのに。 「あなたは誰ですか?私に何か用ですか?」 「君の母親が経営するバーで働いてるんだ。僕はー…」 「母親に関することなら私には関係ありません。母から伝言を受けたのならばそう言っておいてください。」 私とあの人はもう無関係だ。今更よりを戻そうなんて言われても断る。 「そうか。僕は笠山テル。魔法使いだよ。じゃあね。」 そういってテルさんは去っていく。 「……魔法使い?」 一人、誰もいない施設の玄関で、そう呟いた。 笠山さんが訪れてから二日後、私はテルさんに興味を抱き、施設の人に言って母親のバーを探してもらうことにした。『魔法使いだよ。』この言葉がずっと頭に流れる。どうせなら、私の寿命を延ばしてもらいたい。その頃、私はもう三か月くらいしか生きられない体になっていた。両親を探したいわけじゃない。ただのんびりゆっくり生きていきたいのだ。 それから二週間後、母親のバーが見つかったと知らされた。まず私は外に出る練習を一か月続けた。新しい不治の病にかかり、体が弱っているのは間違いないが、歩けないこともない。全力疾走は難しいけれど、まだ軽く走るくらいならできる。 普通に外も街も歩けるようになった一か月後、バーの位置を聞き出した。それは施設から徒歩30分くらいの場所だった。歩くには遠すぎる。私は限界でも合計で15分くらいしか歩けない。車に乗ると酔って歩ける距離は少なくなるが、仕方ない。三日後にその場所に連れて行ってもらうことにした。 ついに『その日』がやってきた。私の心臓がいつもより少し早く鳴っている。施設の人に声をかけられ、たくさんの人に見守られながら施設を出発する。思ったよりも早く到着する。ゆっくり、ゆっくり歩いていく。辺りは真っ暗だった。もうすぐ、テルさんが出てくる時間だという。裏口で座って待つ。そして、ドアが開いた。そこにいたのは、母親だった。 「あんた…リリカ?なんでこんなところいんのよ。早く施設に戻りなさい。」 「て、テルさんを呼んで。」 「なんであんたなんかの命令を聞かなきゃならないのよ。ほんっと、空気読めない子ね。帰りなさい。」 帰るわけにはいかない。そう、感情が高ぶったのが、最後だった。母親が立ち去った後、考えもなしに立ち上がる。その時、 私は倒れた。 視界が真っ白になって、頭に強い衝撃を感じる。忘れていた。私は最近病気の進行が早くなって、余命より数日早く亡くなるだろうと言われていたのを。その後すぐにテルさんの声が聞こえる。 「り、リリカさん………???生きてる…?」 私には未来への希望なんてなかったんだ。私はテルさんに何を求めていたのだろう。生きること?どうせ人は死ぬのに。運動したかったこと?私は体を自由に動かせるわけないのに。 しばらく考えて、分かった。 幸せになること。 ただひとつ、これを求めていた。テルさんに会った時、私は幸せになれる気がしたんだ。 そんな、わけ、なかった、のに、な…… そこで、私の意識は途切れた。 私は目を覚ました。どうして?あぁ、死後の世界ってやつか。でももふもふするし…あったかい。ぬくもりというものを何か感じる。死後の世界にもそんなことあるんだ。そう思って目を開けると… そこにはテルさんがいた。 「て、テルさん……?」 「お、目を覚ましたんだね、リリカさん。」 「な、なんで…私、死んだんじゃ……?」 「忘れた?僕は、魔法使いだよ。」 私はそこで、生まれて初めて泣いた。涙というものを初めて感じた。テルさんは、私のことを助けてくれたんだ。 「テルさん、私、いつまで生きれるの…?」 「君が本気で死にたいって思うまで。」 「いつまで私…………幸せでいられる……?」 「君が幸せはもう十分だって思うまで。」 ずっと、泣きはらした。ずっとずっと、テルさんの腕の中で泣いた。 それから、私の体は嘘のように動いた。走れた。笑えた。 感謝しかない。ありがとう。テルさん。