えくぼの言い伝え
「ねぇ、えくぼって、死後、生まれ変わる前記憶を忘れない代償に冷たい川で1000年耐えた人の印らしいよ。」 へぇ、えくぼって案外ロマンチックなものなんだ… 私は実花(みか)。 私の右の頬には微笑んだ時にできる小さなえくぼがある。左は消えかけだけど… 私も、忘れたくない記憶があって1000年耐えた…のかな? ***遡ること1020年前*** 私は実花(みか)。婚約者がいるの。名前は新堂(しんどう)くん。新堂くんとは来週結婚して結婚式をあげる予定なんだ。 「実花。結婚してください」 付き合う前はあんなに奥手で私が何かしないと1㎜も進まなかった恋だったのに、付き合った途端積極的になった彼。大好き。彼は元々優しかった。私がコンプレックスとしていた生まれつきの手のひらの「あざ」をみて、「これなら手だけで実花ってわかるね!」と言ってくれたんだ。その時、恋に落ちた。来世でも忘れたくない存在だ。 そんな5日後。新堂くんは天国に旅立った。私に会いに来る途中、通り魔に刺されたのだ。 ごめん、本当にごめん…! 泣いても泣いても晴れない心。こうやって泣いた時はいつも横に来て励ましてくれたな。 なんで行っちゃうの…?2人で幸せな家庭を築くって誓ったじゃない。新堂くんがいない世の中なんて…生きてても無駄だよ…新堂くん以外に愛せる人なんて…いない。私は意を決して道路に飛び込んだ。 ……。あ、私死ぬの、成功したんだ…「…えっ、実花殿は今の自分を残したまま来世へお行きになりたいのですか!?」 彼は私担当の天使らしい。 「そうなの。そのために、死んだの。お願い、お願い!」 「…それなら…」そう言われ私が案内されたのは、とてつもなく長い川。どうやらここで1000年耐えなきゃいけないらしい。 チャプン。あ、冷た…でも、ここまでしたんだから。新堂くんに会うんだ…! ******現代****** 私はふと生まれつきある手のひらの「あざ」を見た。これを見ると昔から胸が締め付けられるような気がした。 「こんにちは」教室に、誰かが入ってきた。 「転校してきました、新堂昴(しんどう すばる)です。よろしくお願いします。」 新堂くん。なぜか、涙が溢れてきた。新堂くんと目があった、そんな気がした。