私たちは、小さくて大きい。 悩みにうなされても。
お経のような授業をつらつらとノートに書いていく。冷房の効きすぎた塾の中、たんたんと時は流れていた。 外を見ると雨が降っている。「ふぅ」と鼻息交じりのため息をつきながらノートに目を落とす。 最近、漠然とした憂鬱がつきまとっている。いいことが何も無い。部活も友達付き合いも上手くいかず、成績も右肩下がり。そのせいで母親ともぶつかり、ぎくしゃくしている。 こう、ぼーっとしている間に授業が終わっていた。 自動ドアが開き、じめじめとした雨の中を走ることなく歩く。空気が重く感じ、心の穴のようなものはどんどん体をむしばんでいった。 家に着くと、髪から落ちるしずくを気にせずに自分の部屋に入った。人工的なライトの色と、シーンとした部屋は落ち着きと不安を感じさせる。 そんな自分にまた疲れて、身体ごとベッドにダイブした。深く息を吐き、枕元にあったスマホでmetubeを見始めた。オススメに出てきたバンドのやけに明るくてリズミカルな歌は虚無感を増幅させた。ちょうど、聞き終わるころには時計の針が重なろうとしている。 眠くはなかった。体を起こし、少しの間座った後、ベランダに出ようと、意味もなく動いた。 網戸を開けると、雨は上がっていて初夏のひんやりとした風がふっと頬を撫でた。外ではちかちかと点滅している光や、人の声などが遠くに感じた。空を見上げると周囲の雲を優しく照らしている星々があった。 心地よい時が流れていく。 そうしていたら、なんだか自分がちっぽけな存在で、考えていることが些細なことに思えてきた。 ……重く考えすぎていたかも。 これからのことは誰にも、何もわからない。 けど、自分を見て、支えてくれている人はたくさんいるなぁと思い、少しだけ、前向きな気持ちになった。 ささやかに柔らかい夜空を見て目を細める。心の穴を埋めるように、大きく吸い込んだ空気で口角も少し緩んだ。 私はずっと…小さくて。それでも大きな夢を見ていいんだ。 絵空事に振り回される人生もいいな。 …なんて。 きっと…大切なことに気付いた今日は、また過ぎてゆく。