儚い命の灯火を。
「伊織...」 「凪...沙...」 間宮凪沙は、寝室に横たわる桐谷伊織に声をかける。 彼、伊織は『儚生病(ぼうせいびょう)』という病を患っている。 この病にかかった者は、例外なく齢15で命を落とす。 早期発見が難しく、中学生に多い病にも関わらず、世間には公にされていない難病だ。 「...俺、凪沙と一緒に居れて...よかった...。」 「...私もだよ、体育祭も文化祭もなにもかも、伊織が居なきゃ私、楽しくなかった...。伊織が居てくれたお陰で毎日楽しくて仕方なかったの。」 「...凪沙。」 伊織は、静かに凪沙の手を握り、眉を下げて笑った。 「凪沙は、将来結婚して、家庭築いて、世界で1番幸せになれ...。」 最後の俺からのお願いだ、そう伊織は言うと、目を閉じて小さな声で、 「大好きだよ。」 と言った。凪沙が握っていた伊織の手は、どんどん冷たくなっていく。 凪沙は冷たくなった伊織に静かに口づけをした。 「私も、大好きだよ...。」 そう言って凪沙の身体は体温を下げていった。 「凪沙!!」 「伊織!!」 どこまでも続く花畑と広い青空の下で抱き合う2人の少年少女がいた。 その2人は、間違いなく世界で1番幸せな2人だった。 先日、中学生2人が一軒家の一室で亡くなっているのが発見された。 死因は、『儚生病』だった。