バラ色の君へ
この世界には、いたるところにとげのついたツタが巻き付いている。家の壁にも、街中にも、どこへ行っても。 常識だが、そのつたはバラのつたで、薄ピンク色をしている。バラは、昔人類が育てていたとされる花で、ぼくたちはその人間の進化系だといわれていた。今はつただけで花は見たことがないけれど、昔はバラはあげる相手への恋心を表すものだといわれていたらしい。まあ、なんにしろ今の世界には関係のないことだ。でも、僕にはちょっと気になっている女の子がいる。その子は僕と同じ小学三年生で、隣の席の「よぞら」ちゃんっていうんだ。あまり話したことはないけれどすっごくかわいくて、特に友達と話していたりする時に見せるとびきりの笑顔が、まるで輝く夜空のようなんだ。こんな感じで結構相手の観察もしてる僕だけど、告白はしない。みんなにばれたら嫌だし、もともと気持ちを素直に伝えることの苦手な僕には到底無理だ。でも、その子を思う気持ちは変わらない。 ある日、学校で、夜空ちゃんバケツの水を盛大に水を盛大にこぼして、みんなにかけてしまった。男子はもちろん、女子も含めるみんながぶつぶつと夜空ちゃんを攻め始めた。「おいっ!濡れたんだけどっ!!」「この服気に入ってたのに!」「最悪」みんなが言葉を発するたびに、夜空ちゃんは申し訳なさそうな顔になっていって、もうすでに泣きそうだ。僕にはそれが許せなかった。「夜空ちゃんにも悪意はなかったはずだ。でもお前らの言葉はそれに反して、悪意たっぷりだ!」心の中だけのつもりだったのに、いつの間にか僕は声に出していた。ハッとしたが、みんなは「なにそれー」と不機嫌そうにただ去っていくだけだったのでほっとした。夜空ちゃんが何か言いたげな顔をしていたその時、ちょうどチャイムが鳴った。「あ、授業だ。」僕は急いで教室へ入って準備をした。 放課後、帰りの準備をしているとき、騒がしい教室の中で夜空ちゃんが僕によってきて言った。 「ありがとう、翔君」少し照れくさそうな夜空ちゃんに、僕は「また困ったら、連れてってもいーよ」といった。すると、「フフッ、なにそれー」と、夜空ちゃんが笑った。それは、ぼくがずっと近くで見たかった、飛び切りの笑顔だった。僕は自分でもドキッとしたのが分かった。僕は、家に帰ってから、日記に思いをはせた。「もしもこの世界にバラの花が咲いているならば、ぼくは必ず君へ、愛を込めて贈る。きっと、その時も君は飛び切りの笑顔を見せてくれることだろう。それも、バラ色の笑顔を」